2025年2月号
都心の高速道路「KK線」が歩行者空間に生まれ変わる!
みなさんは、東京都の道路がどれくらいの長さなのか、考えたことはありますか?
東京都の道路は、すべての長さを合わせると約2万4,741kmあり(令和4年4月1日時点)、それは地球の半周分以上もあります。かといって、これは完成形ではなく、人やものの流れを支え、未来を見すえた首都東京のまちづくりのために、日々進化しています。
これから紹介する東京高速道路(KK線)は、千代田区、中央区、港区の境界に位置する全長約2kmの自動車専用の道路です。
日本橋周辺の高速道路を地下に!
銀座の真ん中を南北に走る中央通りを進むと、日本橋川があり、そこには「日本橋」という橋がかかっています。この橋は江戸時代、東海道や中山道など五街道のスタート地点となったところです。
今は橋の北西の端に、日本のすべての道路のスタート地点を示す「日本国道路元標」があります。ちなみに、橋の柱にある「日本橋」の文字は、江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜が書いたものです。
歴史的にも重要な地点である日本橋ですが、今は川の上を「首都高速道路(首都高)」とよばれる高速道路が通っていて、空が見えません。この首都高を地下トンネル化して、日本橋周辺を明るく開放的な空間にしようという計画があり、2040年度の完成を目指して工事が進められています。
日本橋周辺の首都高地下化に伴う新たな都心環状ルートとなる「新京橋連結路」の整備により、東京高速道路(KK線)の自動車専用の道路としての役割が大きく低下することから、KK線上部空間を歩行者中心の公共的空間として再生することとしました。
東京高速道路(KK線)とは
東京高速道路(KK線)は、民間企業である東京高速道路株式会社により建設、運営されている全長約2kmの自動車専用の道路です。銀座周辺の外堀、汐留川、京橋川の一部を埋め立てて建設した、日本初の民間活力による無料の自動車専用の道路です。
「道路の下をお店などに貸す賃貸スペースとし、その賃貸料のお金を道路の建設費と維持管理費にあて、無料で一般の人が通行できるようにする」という仕組みによって実現しました。1952(昭和27)年、道路運送法という法律に基づく自動車道事業(一般自動車道)免許を取得し、翌1953年に建設を始め、1966(昭和41)年に全線の道路としての通行を開始しました。
東京高速道路(KK線)は、高架道路と賃貸スペースが一体となったユニークな構造です。鉄筋コンクリートづくりの14棟の賃貸スペースの上部と13の橋がつながって2㎞あまりの道路となっています。
また、首都高速道路の都心環状線と八重洲線につながっており、特定中型自動車以上の車両通行禁止となっています。規制速度は、時速40㎞。車の通行量は1日あたり約25,000台です。
歩行者中心の公共的空間へ
東京の新たな価値や魅力を創り出すため、KK線上部空間を歩行者中心の公共的空間として再生・活用することを目指し、3つの将来像、「高架道路の形態をいかした広域的な歩行者系ネットワークの構築」、「連続する屋外空間をいかした大規模なみどりのネットワークの構築」、「既存ストックをいかした地域の価値や魅力の向上」を定めました。
KK線上部空間は緑豊かな歩行者空間に整備し、道路の幅が約16m以上の区間は、歩行者の通行空間に加え、にぎわいのための広場などの人が滞在する空間を確保します。
また、晴海通りなど主要な道路と交差するあたりに、まちをながめることができる場所を整備します。道路の幅が約12mの区間は、歩行者の通行空間を確保します。また、KK線上部空間には、だれもが楽しめる居心地のよい空間づくりに向け、植物や各種サービス機能を整備したり、アートなどの導入も検討します。
2023、2024年にはこのKK線で、自動車を通行止めにして、だれでも歩ける催しが開かれました。遊具が置かれたり、吹奏楽などの音楽演奏が行われたり、早朝ランニングが行われ、たくさんの人がひと足先に“未来の歩行者空間”を体感しました。東京都では今後も事業の計画段階から広く情報発信を行っていく予定です。
東京都では、人中心の空間を生み出し、何度でも歩きたくなるウォーカブルなまちづくりを進めています。その象徴となるのが、このKK線を人々が歩く空間へと再生するプロジェクトです。
全区間の整備が完了するころには、みなさんは大人になっています。今から楽しみですね。
東京都はこのように、未来に向けたまちづくりを進めていきます。
取材協力=東京都都市整備局、建設局