2023年1月号
無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)
女の子? 男の子? それって自分の思いこみかも!
「無意識の思いこみ」ってどういうこと? って思ったキミ。まずは、下のイラストを見てみてください。
さて、問題です。人形で遊んでいるのは、女の子でしょうか、男の子でしょうか。消防士は、男性でしょうか、女性でしょうか。ピンクのランドセルを背負っているのは? ごはんをつくってくれているのは?
正解は……「見る人によって変わる」です。
人形とロボット、どちらで遊びたいかは、人それぞれですね。保育士や消防士には、どちらもむずかしい試験に合格し、経験や訓練を積んだ人がなることができます。黒が好きな人もいれば、ピンクが好きな人もいます。会社ではたらくこと、家事をすることは、同じように大切な役割です。ですから、このイラストを見ただけでは、だれが女の子・女の人で、だれが男の子・男の人かは、わからないはずです。ところが、わたしたちは「この子は男の子」、「この人は女の人」というように、イラストをぱっと見ただけで頭に性別を思いうかべます。
それはみなさんの脳が、「今まで見た消防士はみんな男の人だったから、このイラストの消防士も男の人にちがいない」というように、今まで経験したことをもとに、すばやく判断しているからです。ですが、実際には、消防士として活躍する女の人もいるので、「この消防士は男の人だ」というのは、思いこみですね。このように、今まで自分が経験したことや知っていることから「こうだ」と思いこむことを「無意識の思いこみ(アンコンシャスバイアス)」といいます。無意識というのは、「自分で気がついていない」という意味です。
大切にしよう! 一人ひとりの個性
無意識の思いこみは、人間の脳のはたらきによるものなので、だれもがもっています。思いこみをもつこと自体は、自然なことです。しかし無意識の思いこみによって言ったことや、したこと、決めたことは、ときにだれかをきずつけたり、自分の可能性をせばめたりすることがあります。
たとえば女子の友だちが「消防士になりたい」と言ったとき、あなたが「ふつうは男の人がなる職業だよ」と言ったら、どうでしょう。また、あなたが男子で「保育士になりたい」という夢をもったとき、「でも、自分は男だから向いていないかも」と思ったらどうですか。
実際に、日本ではたらく消防士のうち、女性は全体の約3.2%(2021年4月時点)。また、保育士の男性は全体の約4.9%(2020年度)です。「女だから向いていない」、「男らしくない」などと人から言われたり、自分で思ったりして、夢をあきらめた人もいるかもしれません。
でも、「ふつう」って、なんでしょう。「女らしい」、「男らしい」とは、だれが決めたのでしょう。それは自分の思いこみかもしれません。
自分でも知らないうちに人をきずつけたり、自分の夢をあきらめたりするなんて、いやですよね。でも、無意識の思いこみは、なくすことはできません。わたしたちにできるのは、「自分にも無意識の思いこみがある」と、いつも頭のどこかで考えるようにすることです。言葉にしたり、行動に移したりする前に「これって自分の無意識の思いこみかもしれない」、「こう言ったら、相手はきずつくかもしれない」と一歩立ちどまって考えることができます。もし行動に移してしまっても、相手の反応などから「これは自分の無意識の思いこみだったんだ」と気がつくことができますね。
だれかに「男だから」、「女なのに」とか、「今まではこう」、「みんなそう」と言いそうになったら、女や男、「今まで」や「みんな」ではなく、目の前の相手に目を向けてみてください。わたしたちは一人ひとり、ちがう個性をもった人間です。その人の気持ちや「らしさ」に思いをはせてみましょう。そのうえで、相手にどんな言葉をかけるのがよいか考えてみてください。
自分自身に対しても同じです。まよったときには、自分の心を見つめなおして、自分が本当に好きなもの、したいこと、感じたことを大切にしてください。思いこみで決めつけず、「好き」や「○○したい!」をどんどんのばしていきましょう!
ほかにもないかな? こんな思いこみ
そもそも、人の性のありかたはさまざまで、「この人は男性」、「この人は女性」とかんたんに2つに分けられるわけではありません。からだの性、こころの性がそれぞれあり、恋愛の「好き」という気持ちを向ける相手の性も、人によって違います。どのような言葉づかいや服装、ふるまいをするかも、人それぞれです。どちらでもない人、わからないという人もいます。
また、無意識の思いこみは、性別にかかわるものだけではありません。「お年寄りだから、パソコンは苦手だろう」、「外国の人だから、日本語はわからないだろう」……こんなふうに「こうに違いない」、「ふつうはこうだ」と思ったときは、注意! だれもが自分らしく生きられる社会に向けて、まずは「これって自分の思いこみかもしれない」と考える習慣をつけましょう。
自分の世界を広げよう!
みなさんは、虹は何色に分かれているか知っていますか。正解は7色! とは、じつは言えません。虹の色はグラデーションになっており、色と色のあいだにはっきりした境目はありません。色をどのように区切るかは国や地域によって異なるので、アメリカ合衆国の人は6色、ドイツの人は5色に見えるといいます。8色や2色に見えるという地域もあるそうです。江戸時代の浮世絵では3、4色に塗り分けられており、時代によっても変わります。
わたしたちは絵本で見たり、文章で読んだりして、「虹は7色」だと思っています。でも、それもひとつの思いこみによるものなのです。
このように、自分とは異なる考えや感じかたを知ると、自分の考えが絶対ではないこと、さまざまな感じかたのうちのひとつだということに気がつきます。人と会う、本を読む、行ったことのない場所に出かける……みなさんが新しいものに出会い、新しいことに挑戦するたびに、みなさんの世界は大きく広がっていきます。勇気を出して、最初の一歩をふみ出してみましょう!
TOKYOものしり辞典
寒い冬をあたたかくすごす工夫って?
毎日、寒い日が続きますね。つい暖房の温度を高く設定したくなりますが、エアコンを動かすための電気や、ストーブに使うガスや灯油は、使える量に限りがあります。5月号で学んだように、日本はこれらのエネルギーをつくるための天然ガスや石油などの資源を外国からの輸入にたよっているからです。寒くなってたくさんの人がいっぺんに暖房を使うと、発電が追いつかず、停電してしまうこともあります。
電気やガスを使えなくなったら、たいへんですよね。そのためには、わたしたち一人ひとりがエネルギーを大切に使うことが必要です。東京都の電気を「Ⓗへらす」「Ⓣつくる」「Ⓣためる」HTTの取り組みをチェックして、電気を節約する節電、ガスを節約する節ガスに取り組みましょう。
ちょっとした工夫をすることで、使うエネルギーを減らしてもあたたかくすごすことができます。節約にもつながりますよ。ぜひ、家族といっしょにできることからはじめてみてください!
冬のHTTの取り組み
✅みんなであたたかい部屋に集まろう
家族がひとつの部屋に集まれば、暖房をつけるのもひと部屋ですむね。暖房時の室温は、20℃をめやすにしてね。
✅冷蔵庫の温度設定を「弱」にしよう
寒い冬には、冷蔵庫の温度設定は「弱」で十分! スイッチひとつで節電につながるよ。
✅重ね着をしよう
暖房の温度を上げる前に、着るものをくふうしよう。首や手首、足首をあたた効果的だよ。湯たんぽも使ってみてね。
✅ガスも節約しよう
ガスはものをあたためたり、お湯をわかしたりするために使われているよ。コンロの火を強くしすぎない、食器を洗うときにはできるだけお湯を使わない、お風呂の追いだきをしない、シャワーで使う水の量を減らすなど、できる範囲で取り組んでみよう。
✅省エネルギー(省エネ)性能が高い家電に買いかえよう
家電製品の省エネの性能は、どんどんよくなっている。古いものから買いかえるだけで、大きな省エネになるよ。
✅熱を外へ逃がさない窓に変えよう
暖房の熱は、ほとんどが窓から逃げていくよ。窓ガラスを複数のガラスを重ねた複層ガラスにかえる、窓の内側にもうひとつ窓を取りつけるなど、リフォームできないか家族で相談してみよう。難しければ、断熱シートをはったり、カーテンを厚手のものに変えたりするだけでも効果があるよ。
✅電気を家庭でつくろう
太陽光で発電する太陽光パネルを家庭の屋根に設置すれば、家庭で電気をつくることができる。電気代が安くなり、停電したときにも電気が使えるよ。設置できないか、家族で相談してみよう。
✅蓄電池や電気自動車などを活用しよう
太陽光パネルで発電した電気を、蓄電池や電気自動車などにためて使おう。停電や災害がおこったときにも電気を使うことができるよ。