2023年11月号
東京都内に眠る大遺跡群を探検
みなさんは「多摩ニュータウン」という地域を知っていますか? なかには「住んでいる」という人もいるでしょう。日本がすごい勢いで発展した「高度経済成長期」と呼ばれる1960年代以降、東京に住む人が急激に増えて、住宅不足が問題になりました。そこで、住みやすい環境を整備しようと、東京西部の大きな丘を切り開いて作られたのが、多摩ニュータウンです。
多摩ニュータウンの開発が決まると、その地域内で、約3万2000年前の旧石器時代から江戸時代にかけてのさまざまな遺跡がみつかりました。その遺跡の調査成果を保存・展示しているのが、東京都立埋蔵文化財調査センターです。この大遺跡群を広報学芸担当の塚田清啓さんと探検!
古代に触れる、広大な自然
都立埋蔵文化財調査センターには、大昔の人々が実際に生活で使っていた本物の土器や石器が展示されています。教科書では分かりにくい昔の人の暮らしを感じることができます。どうして1000か所近くものたくさんの遺跡が多摩ニュータウン地域で見つかったのでしょう。
塚田さんは、「ここは豊かな森や川があります。森からは木の実、それを食べる動物、川からは魚など食べ物に恵まれていました。そして土器を作るのにちょうどいい粘土がたくさんありました。だから縄文の人たちにとっては、とても住みやすい所だったのだと思います」と話します。
本物の縄文土器に触れる
多摩ニュータウン遺跡群では、発掘調査が進むと、新たな歴史的発見となるような土器や石器、人々の生活の跡などがたくさん見つかり、何度もニュースとして新聞記事になりました。令和5年度の企画展示では、その記事とともに、実際に記事の元になった石器や土器などを展示しています。
塚田さんは「多摩ニュータウンで見つかった最も古い石器は、約3万2000年前(旧石器時代)のものです。遺物が見つかるということは、そこに人がいた、という証拠です。そのころからこの多摩地域の広大な丘(丘陵といいます)に人が住み始めたと考えられています」と話します。
「これが多摩ニュータウンで見つかった旧石器時代の石器です」と見せてくれたのは、先を鋭くとがらせた「尖頭器」と呼ばれる石器です。木の棒の先につけるなどして、やりとして大型の動物を狩るために使われたと考えられています。
展示室には時代に応じたさまざまな石器や土器、土偶、耳飾りなどが、たくさん展示されています。そしてほかの施設ではほとんどないことですが、ここには本物の土器に触れることもできる展示もあります。
展示室のとなりには、さまざまな体験コーナーもあり、実際に体験し、楽しみながら、昔の人の技を感じることができます。
遺跡から見つかる土器は、そのままの形で出てくることはほとんどありません。だいたいは、ばらばらに割れた状態で複数の土器がまざって見つかります。それを専門家がパズルを解くようにして組み合わせ、復元していくのです。体験コーナーの「土器の復元にチャレンジしよう」は、ばらばらになったピースを組み合わせて立体のジグソーパズルのように土器を再現するもので、とても人気のあるコーナーです。
まるで縄文時代へタイムスリップしたような庭
建物遺跡庭園「縄文の村」が広がります。ここには、日本が国になるはるか昔の縄文時代の約4500~6500年前に人々が家にしていた竪穴住居などが復原されており、当時の人が住居の床に利用した石の上を実際に自分の足で踏んでみることができます。また、この庭園内にある木や草類は、クリやトチノキなど、実際に縄文時代でもあった種類のものが選ばれて植えられています。
この施設では、「縄文土器作り」など大昔を体験するさまざまな催しが開かれています。みなさんも、当時に思いをはせながら、縄文時代に時間旅行してみませんか。
取材協力:東京都立埋蔵文化財調査センター
👉東京都立埋蔵文化財調査センター(電話042-373-5296)
住所:東京都多摩市落合一丁目14番2
交通:京王相模原線「京王多摩センター駅」、小田急多摩線「小田急多摩センター駅」(二つの駅は、同じ建物でつながっています)から徒歩約5分
多摩都市モノレール「多摩センター駅」から徒歩約7分
入場料:無料
開館時間:午前9時30分〜午後5時まで(遺跡庭園「縄文の村」は、11月から2月まで午後4時30分閉園)
休館日:年末年始(12月29日から1月3日まで)と、展示替えの臨時休館、施設整備のための臨時休館(不定期)