2024年1月号
さまざまな国や文化の人と理解し合う“国際都市”東京
あちらこちらで外国人の姿が目立つようになってきました。新型コロナウイルスの世界的流行がひと段落し、また観光客が戻ってきたようです。実は、それだけでなく、日本に住んでいる外国人の数も急激に増えており、東京都内に住む外国人は60万人を超えました。
世界にはたくさんの国があり、それぞれ気候や自然だけでなく、暮らし方や習慣も違っています。さまざまな国の人が住む“国際都市”東京。お互いの文化や習慣を理解し合うことが大切です。
190の国と地域から外国人が集まる“国際都市”東京
都内に住む外国人(日本国籍以外の人)の数は、62万9651人(2023年10月1日現在)。これは金沢市や鹿児島市といった県庁所在地の人口を上回る数になっています。
コロナ禍で減った時期もありましたが、2013年10月の39万736人と比べると、この10年間で約1.6倍に増えています。
出身の国や地域は全部合わせるとなんと約190もあり、世界中の国々から来ていることがわかります。
外国から日本に来た人たちは、すぐに日本語を理解できるでしょうか? 病気やケガをしたとき、災害が起きたときなど、まだ慣れない土地で、たくさんの不安を抱えることになるかもしれません。
「多文化共生」を支援する東京都の取り組み
「東京都つながり創生財団」は、東京都内に住む外国人の支援や地域のボランティア活動のサポートを行う団体として2020年10月に設立されました。「人」と「人」をつなぐことで、みんなで支え合い、どんな人でも安心して暮らせる環境づくりをすすめています。その大きな仕事のひとつが、お互いの文化を認め協力しあう「多文化共生」に根差した社会づくりです。
具体的には、外国語で相談ができる「多言語相談ナビ」の運営、在住外国人に役に立つ情報の発信(「東京都多文化共生ポータルサイト(TIPS)」)、日本語を身近な場所で学習できるようにする「地域日本語教育の推進」、「日本語を母語としない子どもへの支援」といったサービスの提供やこうした活動をしている区市町村や団体の支援をしています。
▶多言語相談ナビ
知りたいことや生活で困っていることなどを、無料でさまざまな国の言語を使って相談できます(電話代は別)。東京都の窓口では、英語、中国語、韓国語の3か国語で相談できますが、つながり創生財団では、やさしい日本語、ポルトガル語、スペイン語、タイ語、ロシア語、タガログ語(フィリピンの言葉)、ベトナム語、ヒンディー語(インドの言葉)、ネパール語、フランス語、インドネシア語、ミャンマー語でも相談できます。
▶日本語を地域で学べるようにする活動
日本で暮らし始める外国人の中には、日本に来て初めて日本語を勉強する人もいます。しかし日本語には「ひらがな、カタカナ、漢字」、そして相手によって使い方を変える「敬語」などの表現もあり、学ぶのがとても難しいと言われています。つながり創生財団では、日本語を勉強したい人や、子どもが日本語を勉強できる場所を探している人などのために、「東京日本語教室サイト」を開設し、地域で日本語を学ぶ場※を紹介しています。
※登録されているのは基本的に無料のボランティア教室ですが、くわしくは直接問い合わせをしてください。
▶「やさしい日本語」を広げる活動
つながり創生財団では、日本語が初級の人にもわかるように簡単にした「やさしい日本語」を使うよう呼びかけています。たとえば大きな地震があって津波が起こりそうなとき、「高台に避難してください」と言っても、「高台」「避難」という言葉を知らない人は理解することができません。でも、これを「高いところに逃げてください」と言い換えれば、より多くの人に伝わります。
外国人と話すというと「英語で話さなければ」と構えてしまう人がいるかもしれません。ですが、日本に住んでいる外国人の中には、日本語を勉強していて日本語で話したいと思っている人がたくさんいるといいます。何か困っているような外国の人がいたら、わかりやすいやさしい日本語で話しかけてみてください。
あなたにとっての「当たり前」を見直そう
では、外国人にはどんな困りごとがあるのでしょうか。つながり創生財団には主に大人から、日本語を勉強したい、在留資格(日本に住むための資格)について相談したい、仕事や住む場所を見つけたいなどの悩みが寄せられるそうです。また、子どもの学校生活についての困りごとの話を聞くことが多いそうです。
例えば子どもが小学校に通う場合、学校に入るときに、保護者は上ばきや帽子、体操着、補助教材などたくさんの準備をしなくてはいけません。何をどのようにそろえたらいいのかわからず、とまどう保護者も多いといいます。
つながり創生財団によると、おそろいの帽子をかぶって通学することも、授業が終わったあとに当番でそうじをすることも、日本では当たり前になっていますが、世界ではそうではない国や地域もあるそうです。また、弁当というと簡単なものを持たせる国や地域も多いため、遠足や運動会などの行事で、時間をかけて準備をした日本のお弁当を見て驚くことも多いそうです。
「もし外国人の友だちが同じ学校にいて、みんなと違うところがあっても、それを『自分たちと違っておかしい』と考えるのではなく、『国や地域によっていろんなことが違っている』と受け止めてほしいです。やさしい言葉で会話をすると、もっとほかに、そのお友だちの国や文化について知ることもできるかもしれません」とつながり創生財団では話しています。
外国から来た子どもたちは、毎日の生活に使う日本語を覚えたとしても、学校の勉強に使う日本語がわからないことがあります。例えば算数で「平行」「垂直」「分数」といった言葉がわからないと、問題を解くことができません。国によっては、九九がない所もありますし、筆算の仕方も国によってやり方が違うことがあります。そうした言葉ややり方の違いでつまずいたことから勉強についていけなくなってしまい、学校がつまらないから行きたくない、と言い出す子どももいるそうです。みなさんも、もし教室で勉強がわからなくて困っている外国のお友だちがいたら、できるだけわかりやすい言葉で教えてあげられるといいですね。
異なるものを受け入れ、お互いに理解を深めよう
つながり創生財団は「アメリカやヨーロッパ、アフリカの出身の人は、見た目が日本人と違うことが多いのでわかりやすいですが、例えば中国や台湾、韓国など東アジアの国や地域から来た人たちなどは、日本人と外見があまり違いません。そのため、外国人だということがわからずに、困っているのに見過ごされてしまうことがあります。世界には外見が似ていても、言葉や習慣が違う国がたくさんあるということもぜひ理解してほしいです」と話します。
特に東京都は、さまざまな国や地域から、多様な文化や習慣を持った人々が集まる“国際都市”です。お互いの違いを「違っていていいんだ、違っているから面白いんだ」と受け止め、理解を寄せ合うことはとても大事なことです。互いへの理解が“ちょっとした心遣い”で深まっていくのは、相手が日本人でも外国人でも同じ。近くに住む外国ルーツの人々と交流し、日本の文化や人々を知ってより好きになってもらうため、自分にできそうなことを考えてみましょう。
取材協力=東京都つながり創生財団