2024年9月号
大地震後の72時間、あなたはどう行動する?
日本は、地震がとても多い国です。大きな地震の被害が毎年のようにあり、東京でも近い将来、大規模な地震が起きると予想されています。もし地震が起きたら、支援が届くまで、わたしたちは自分の力でなんとか生き残らなければなりません。その目安は3日間、72時間と言われています。江東区有明にある「そなエリア東京」は、非常事態をどうやって生き残るのかを学ぶことができる防災体験学習施設です。
そなエリア東京がある「国営東京臨海広域防災公園」とは
そなエリア東京があるのは、「国営東京臨海広域防災公園」です。ここは、国の行政機関である国土交通省が管理する国内にただ一つの国営防災公園として、2010(平成22)年にオープンしました。
ふだんは防災学習のための施設になっていますが、首都直下地震など東京都を含む地域で大規模な災害が起きた時には、「緊急災害現地対策本部」が置かれます。国や都、自衛隊、消防、警察、医療チームなどが集まり、災害支援活動の司令塔となるのです。
2階の見学場所からは、実際に国が災害支援の指揮をとる「オペレーションルーム」をガラス越しに見ることができます。
隣にある病院(がん研有明病院)との間の「エントランス広場」は、緊急時には救護活動を応援する場所として救急車などが入ることができるようになり、病院南側の多目的広場もテントなどで防災拠点となる予定です。さらに大型ヘリコプター7機分のヘリポートもあります。そなエリアの横にある多目的広場も、災害が起きた時にはこの防災公園全体が災害支援の中心地点となる特別な場所となります。
「東京直下72h TOUR」で防災体験
そなエリア東京は、参加者が、実際に災害が起きた時をイメージし、 “その時が来たらどうするか”を、展示や体験を通して学べる場所です。「東京直下72h TOUR」は、地震が起きた時、支援が届くまでの72時間(3日間)をどう生き残るかをテーマにしたプログラムです。
さあ、それでは「東京直下72h TOUR」に参加しましょう。 まず入り口で、一人ひとりにタブレット端末が手渡されます。
みなさんがお出かけ中、駅ビルのエレベーターに乗っている時に震度7の地震が発生します。床が振動し、エレベーターは緊急停止します。
エレベーターから降りると、そこは停電した薄暗い従業員通路。避難誘導灯と非常放送にしたがって、出口を目指します。
出口から出ると、そこは地震発生直後の街。 折れた電柱、傾いたビル、火災が起きたラーメン屋、くずれ落ちた住宅など、とある駅前の市街地がとてもリアルに再現されています。
みなさんの家は、壁や天井につっぱり棒などで家具を固定していますか? 家具を固定していないと、地震が起きた時、あらゆる家具が動いて部屋がぐちゃぐちゃになってしまいます。寝ている時に地震が来たら?倒れた家具のせいで、部屋のドアが開かなかったら?
もしもの時に想像をめぐらせて、部屋の家具の置き方を、おうちの人と相談してみましょう。
タブレットで指示された場所に行くと、そこでクイズが出されます。カメラを向ける指示にしたがうと、そこに割れたガラスが落ちてきたり、液状化現象※でマンホールが持ち上がったりする映像がタブレットに映し出されます。
※液状化現象とは…地面の土の中では、細かい砂の粒と粒の間に、水分がふくまれています。地震の発生で繰り返し刺激を受けた砂は、水分とバラバラになり、水に浮いたような状態になります。そうすると水より重い砂は下に沈み、地面が下がり、水があふれます。これが液状化です。建物が傾いたり、マンホールが持ち上がったりするのは、この液状化現象が原因です。
クイズで学ぼう!72時間を生き残る知恵
大地震が起こると、街や家が大変な状態になってしまうのが分かりましたか?それでは、みなさんが、災害時に72時間を生き残るために大切なことを、クイズで確認していきましょう。
第1問
建物の中からにげる時の目印として、正しい方はどちら?
正解は A 非常口のマーク
建物に入ったら、いつもこのマークのある場所を確かめるようにしましょう。
第2問
ビル街を歩いている時に地震が起きた!
正しいのは次のうちどちら?
正しいのは次のうちどちら?
A 建物のそばを歩いて避難する
B 建物から離れて歩いて避難する
正解は B 建物から離れて歩いて避難する
高いビルの窓ガラスがわれると、時速40~60㎞で広い範囲に飛び散ります。
地震が起きた時、地震の後は、上から落ちてくる物に注意しましょう。
第3問
がれきの下に人がいるようです。
第一発見者のあなたが、はじめにしたほうがよいことは、
次のうちどれでしょう。
第一発見者のあなたが、はじめにしたほうがよいことは、
次のうちどれでしょう。
A すぐに助けに入る
B 119番に通報する
C 大声でさけぶ
正解は C 大声でさけぶ
建物などの下敷きになった人を一人で助けるのは危険です。
まずは大声を出してまわりの大人に知らせ、次に手分けして119番通報や、たくさんの人で協力して救出活動に取り組むのがよいです。
第4問
1キロメートル先で火が上がっています。
自分の家(今いる場所)は安全かな?
自分の家(今いる場所)は安全かな?
A 安全
B 安全ではない
正解は B 安全ではない
たとえ1キロメートル先でも安全ではありません。
大きな火事では、火の粉が数百メートルから2キロメートル以上飛び、それがさらに火事を引き起こす原因になります。
第5問
火事が起きています。
次のうち、どのように避難するのが正しいでしょうか。
次のうち、どのように避難するのが正しいでしょうか。
A 落ち着いて歩いて避難
B あわてて走って避難
正解は A 落ち着いて歩いて避難
落ち着いて歩いて避難しましょう。
同時にたくさんの所で火事が起きることがあるので、あわてるとさらに危険です。家が燃える速さは、歩く速さよりも遅いので、走らず落ち着いて広い場所に避難しましょう。
「避難所」ってどんなところ?
そなエリア東京には、「避難場所」や「避難所」の様子も展示されています。
「避難場所」は公園など、危険から逃れて一時的に避難する場所で、水や食料などの支給はありません。「避難所」は自宅に帰れない人が、学校の体育館などで、しばらく生活をする場所です。仮設住宅などが間に合わない場合、何カ月もこの避難所で生活しなければならないことがあります。
お風呂もなく、満足に食事もとれず、段ボールで仕切られただけの空間では音も気になり、プライバシーも十分に守られません。季節によっては寒さや暑さに苦労するかもしれません。こうした状況を想像して、事前にどんな準備ができるのか、考えておくことが大切です。
津波の危険を学ぶ体験コーナーを通って2階に上がると、そこは「防災学習ゾーン」。1階の体験ゾーンで見てきた災害で起きることを振り返り、どのような「そなえ」が必要なのかを考え、学ぶことができます。
災害はいつやってくるか分かりません。「そなエリア東京」で、大地震が来たらどう行動すればいいのか、ぜひ体験して学んでください。いざという時に思い出せば、きっと役に立つことでしょう。
取材協力=東京臨海広域防災公園、東京都建設局
住所 東京都江東区有明3丁目8-35
入場料 無料
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日 月曜日
(月曜日が祝日の時は開館し、その翌日が休み)
交通 りんかい線「国際展示場駅」徒歩約4分
ゆりかもめ「有明駅」徒歩約2分