2023年3月号
読書で広がる未来
今号では、女優の莉子さんと、お笑いコンビ・ティモンディの前田裕太さんへの本や読書にまつわるインタビューを掲載! 小さいころに読んだ思い出の1冊や、読書の楽しさ、本を選ぶときのアドバイス、おすすめの本の紹介など、もりだくさんのインタビューは必見です!
絵本、小説、図鑑…
どんな“本”との思い出がありますか?
いままでに読んだ本のなかで、いちばん好きな本は? と聞かれたら、みなさんはなんと答えますか。小さいころ、くり返し読んでもらった絵本。友だちと競って探したまちがい探し。主人公に共感して、思わず泣いてしまった小説。生き物に興味をもつきっかけになった図鑑。学校の先生がおすすめしてくれた伝記……。
いままで読んだ本のことをふり返ると、そのとき自分が好きだったものやがんばっていたこと、家族や友だちとの思い出なども、いっしょによみがえってきますね。ある本を読んで、自分の考えかたや世界の見えかたが変わったという人もいるかもしれません。
では、有名なあの人の思い出の本は、どんな本なのでしょう。気になりますね。「本が大好き!」というキミも、「読書ってむずかしそう」、「なにを読めばいいかわからない」というキミも、前田さんと莉子さんのお話を聞いてみましょう!
「読書は正解がないからこそ何を想像しても自由。その瞬間が好きなんです」莉子さんインタビュー
読書が好きになったきっかけは何ですか?
小学校の時に週1回あった「朝読書」の時間ですかね。みんなで本を持ってきて20~25分くらい集中して読む時間があって。最近買った本をその時間に読んで面白いと思ったら家でも続けて読んだり、あんまり面白くなかったら次の本に変えたりして、時間を使っていました。
小学生のころはどんな本を読んでいましたか?
恋愛モノが好きだったので、そのジャンルを良く読んでいたと思います。ただ一番記憶に残っているのは、 『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』ですかね。ちょうど世代的にドンピシャで、内容としてはかなり難しかったと思うんですけど、物語の起承転結がしっかりしていて楽しく読んでいたと思います。当時の私からしたら「ギャルが有名大学にいく」っていうのがすごくキャッチ-で好きでした。
「どんな本を読めば良いかわからない」と思っている子どもたちに向けて、莉子さん流の選び方のコツを教えてください。
私は普段こんな感じで本を選んでます!
【莉子さん流本の選び方】
① 自分の好きなジャンルを選ぶ!
② 気になる表紙のビジュアルで選ぶ!
③ 書店のランキングをチェックする!
④ “推し”のユーチューバーやインフルエンサーの本を探してみる!
⑤ 目次やあらすじだけまず読んでみる!
私も小学生のころは恋愛モノばかり読んでいました。それでもしちょっと「難しいな…」って思ったら無理して最後まで読まなくても次の本を探してみる。今、ちょうど読んでいるのが尾崎世界観さんと千早茜さんの『犬も食わない』という小説なんですけど、目次が「いちごミルク」とか「フライドポテト」とかになっていて、めちゃくちゃ読みたくさせるじゃんって!ものすごく著者さんならではでキャッチ―ですよね。そういう目をひくタイトルだったり、本のビジュアルだったり、興味を持ったものでいい。
「読書って難しそう」と思っている子どもたちに、おすすめの本はありますか?
『5分後に意外な結末』っていう本がすごくおすすめです。短い5分くらいで読める短編がつまっている作品です。1話1話がそれぞれで完結していて、「途中なのに」っていう感覚にならずにすむ。最後に必ずどんでん返しがあったりするので読み応えもあります。
目次をみて気になった話だけを読むこともできます。自分が興味のありそうな話を読めば良いので、長い文章を読むのが苦手な子にぜひすすめたいです。
今でも本はよく読んでいますか?莉子さんが読書を続ける理由は何でしょうか。
お仕事ではけっこう空き時間があることも多いので、常にカバンの中には本をいれて持ち歩いています。電子書籍では読んだことがなくて、紙をめくって自分で確認できるじゃないですか。「今、これくらいまで読んだんだ」とか。本を持ち歩く感覚も好きです。
読書している間は、他のことを考えずに本の世界に没入できる。物語、ストーリーに入れるので、その時間が心地よくて。語彙力や表現力も吸収できます。
あと読書の面白いところって、頭の中で自由に想像できるところだと思うんです。自分が見ているのは文字だけど、そこから映像に変えていくというか。正解がないからこそ自分で何を想像しても自由っていう。その瞬間がずっと好きなんです。
「将来の夢の途中に本がある」
ティモンディ・前田裕太さんインタビュー
小学生のころに読んだ思い出の本は何ですか?
『エルマーのぼうけん』です。少年エルマーがどうぶつ島でとらえられているりゅうの子を助けに行く話。想像力がふくらむし、物語の途中に絵や地図があって、「本ってこんなに面白いんだ!」と衝撃でしたね。
僕は「りゅうにこんなえさをあげたい」などと頭の中で話を作ったり、本の地図を紙に写して「ここで生活してみたい」と絵をかいたりして、物語の中で“前田のぼうけん”をしていました。
子どものころの僕は、一人よがりな性格。『エルマーのぼうけん』から、負けたり苦しんだりする経験も必要で、実は「楽しいこと」なんだなと思えるようになって。物語では、エルマーがりゅうのいる場所まで遠回りをして、ぬま地などに行きますが、遠回りしたからこそ発見できることもある。
ティモンディは2人組。相方(高岸宏行さん)は、不思議な生き物のようなところもあるので、例えるなら “りゅう”ですね。だから、「前田のぼうけん」は今も続いています(笑)。
高校まで野球に打ち込んでいた前田さん。読書が趣味になったきっかけは何でしょうか?
野球を始めたのは小学4年。当時はプロ野球選手になることが一番の目標でした。夢をかなえるためには、高校野球で甲子園に出なければと思い、地元の神奈川から、愛媛にある野球の強い高校に進みました。でも、高校3年でその夢はあきらめました。部活を引退して情熱をかたむけることがなくなり、「これから何のために生きればいいだろう?」と悩みました。
そんな時、学校の図書室で司書さんが「やることがないなら、これ読みなよ」と、森絵都さんの『カラフル』を貸してくれました。その本がめちゃくちゃ面白かったのをきっかけに、卒業まで1日1冊のペースで、司書さんのおすすめ本を借りて読みました。夢の実現だけが生きる喜びではなく、みんなが楽しく過ごせる形が、世の中にはいろいろあると知りました。それから、読む本の種類はどんどん広がっています。
本の選び方・読み方のポイントを教えてください。
「自分が主人公」と思える本には、絶対に出会えます。僕は野球が好きなので、あさのあつこさんの『バッテリー』という小説にハマりました。みんなも例えば、ごはん、遠足、晴れた天気など、何か好きなことを調べて本を選んだら、興味が広がるんじゃないかな。
読書は自分探しになるし、夢の実現につながることが多いです。大切なのは、何が面白かったのか、面白くなかったのかを知ること。それは、ユーチューバーやコックのような、自分のなりたい夢に近づくためのアイデア集めになります。将来の目標や、進みたい道の途中に本があると思って読めば、好きなものが分かってくると思います。
「読書ってむずかしそう」と思う子どもたちにおすすめする本を教えてください。
まずは『おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』。生き物の好ききらいに関係なく楽しめるし、好奇心をすごくかき立てられます。あとは『モモ』。灰色の男たちが現れて時間をうばう話ですが、みんなが読んでも分かるし面白い。「時間とは何か」と、自分の考え方を問われるような作品です。
こどもたちへメッセージをお願いします。
好きなものはいっぱいあると思うけれど、本には、みんなから愛される理由があります。みんなも、周りにいる人のおすすめ本や、読んでみたい表紙の本を手に取ってもらえたら、人生が2倍3倍どころじゃないくらい豊かになると思います。ぜひ、どんな本でもいいので、試しに読んでみてください!
“読書”が広げてくれる将来の可能性
本は、たくさん読んだ人、早く読んだ人が勝ち! というものではありません。ページ数が多い本、むずかしい本を読んだからといって、えらいというわけでもないですね。読書を通じて得られるのは、いままで知らなかったことを知ってびっくりしたり、なみだがあふれるほど感動したり、つづきを想像してわくわくしたり、思わず深く考えこんでしまったり……そのゆたかで、よろこびにあふれた時間です。それは頭や心の栄養となり、みなさんを大きく成長させてくれます。
もうすぐ新学年。ひとつ学年が上がるのを前に、「本を読んでみようかな」と思ったら、ぜひ、書店や図書館に出かけてみてください。友だちや家族に、好きな本やおすすめの本を聞いてみましょう。莉子さんや前田さんが話してくれたように、好きなジャンルや表紙から選ぶのもいいですね。
「いまは本が好きになれない」、「読書以外にやりたいことがたくさんある」という人も、心配しないで。本はいつでも、いつまでも、みなさんが表紙を開くのを待っています。自分が読みたいと思ったときに、読んでみてください。
みなさんの、本とのすてきな出会いを願っています!
TOKYOものしり辞典
東京都立中央図書館には、何冊の本がある?
東京都が運営する東京都立中央図書館には、約221万冊の本があります。国内の公立図書館でも最多の規模で、もしみなさんがいま10歳で、100歳まで生きたとしても、毎日67冊 ほど読まなければすべての本を読むことはできません。1つの図書館におさめられているだけでも、そんなにたくさんの本があるのですね。
このようにたくさんの本があり、いまも世界中で新しい本が出版されているのは、わたしたち本を読む側の「知りたい」、「読みたい」という気持ちと、著者や出版社など、本をつくる側の「伝えたい」、「表現したい」という気持ちが、絶えることなく重なり合ってきたからです。わたしたちの手に取る本には、たくさんの人の思いがつまっているのですね。
最近は本をデジタル化した電子書籍を買ったり、近くの図書館で借りたりすることもできます。端末があればいつでもさまざまな本を読むことができ、置き場所にもこまりません。拡大や縮小もできるので、読みやすいですね。一方、紙の本は「小さいころ何回も読んだ」、「プレゼントにもらった」など、ものとしての思い出が残ります。充電しなくても読むことができ、一枚いちまい、自分の指でページをめくって読んでいく楽しみがありますね。紙の本と電子書籍、それぞれによいところがあるので、うまく使い分けて、楽しい読書の時間をすごしましょう!