2022年5月号
この夏はみんなでHTTにチャレンジ
生活にかかせない電気
わたしたちのくらしをささえている電気。みなさんが毎日使っている冷蔵庫や電子レンジなどの家電製品や、パソコンやスマートフォンなどの電子機器、照明器具などは、電気がなければ使うことができません。工場で製品をつくったり、人やものを運んだりするためにも、また、会社やお店でも、たくさんの電気が使われています。
電気が使えなくなったら!?
「もし電気が使えなくなったら」なんて、考えたことがないかもしれません。しかし最近、発電に使う天然ガスなどの資源を、安定して手に入れることがむずかしくなっています。日本はこれらの資源のほとんどを外国から輸入しているため、輸出相手国の政治や経済が混乱したり、戦争がおこったりすると、資源の値段が高くなったり、必要な量を確保できなくなったりするのです。すると、みなさんが使う電気の値段は高くなり、場合によっては自由に電気を使えなくなるかもしれません。
また、大きな災害や、発電所で事故が発生したときには、電気がつくれなくなったり、送れなくなったりして、停電がおこることもあります。今年3月16日に福島県沖を震源とする大きな地震が発生したときには、関東地方へ電気を送っている福島県内の火力発電所が停止し、都内でも停電がおこりました。暑かったり、寒かったりして、冷暖房にたくさんの電気が使われた場合にも、発電の量が追いつかず、停電してしまうことがあります。
参考リンク
関東地方の電力の使用状況がリアルタイムでわかる!
電気をへらす! つくる! ためる!HTT
もうすぐ暑い夏がやってきます。みなさんにできることはなんでしょうか。それは、電気を節約して、大切に使うことです。東京都では今年4月から、電気を「Ⓗへらす」「Ⓣつくる」「Ⓣためる」HTTをよびかけています。このうち「Ⓗへらす」で大切なのが、節電です。2019年度に都内で使われたエネルギーのうち、約3割が家庭で使われたものでした。家庭での節電が、大きな役割をはたすのです。
家庭でできるHTT
東京都の新たなチャレンジ、HTT。HTTを進めるためには、みなさんの家庭での協力がかかせません。どんなことがHTTにつながるのか、見てみましょう。
項目
冷房時の室温は28℃をめやすとする
風向きは上向きに設定して、いっしょにせんぷうきやサーキュレーターを使うと、室内の空気を循環させることができるよ。すだれや日よけ(シェード)を設置したり、植物を育てて緑のカーテンをつくったりすると、日ざしがさえぎられて、冷房の効果がさらに高まるんだ。
エアコンのフィルターをこまめにそうじする
フィルターが目詰まりをおこすと、空気の通りが悪くなって冷房の効果が弱まってしまうよ。月に2回をめやすに、そうじしよう。
夏は冷蔵庫の庫内温度を「強」から「中」にする
「中」や「弱」でも、しっかり食材を冷やすことができるよ。夏以外の季節は「弱」でOK!
冬以外は便座の暖房を消し、温水洗浄の温度設定を切る
夏は便座の温度設定をオフにしてね。タイマーや節電モードの設定ができる場合もあるので、活用しよう。
省エネルギー性能が高い家電に買いかえる
家電製品の省エネ技術>は、進化しつづけているんだ。買い替えるだけでも、大きな省エネになるよ。古い家電製品がないか、家族でチェックしてみよう。
熱が伝わりにくい窓にかえる
夏の熱気は、ほとんどが窓からやってくるんだ。複数のガラスを重ねた複層ガラスや樹脂サッシなど、熱が伝わりにくい窓にしよう。マンションなどでは、そなえつけの窓の内側に内窓をつけるのも効果的だよ。
節水型シャワーヘッドを使う
節水機能がついたシャワーヘッドに交換するだけで、お湯の使用量を2~3割減らすことができるよ。
電気の契約を見直して節約!
家庭で一度に使える電力の量(契約アンペア数)は、電力会社との契約によって上限が決まっているんだ。この上限を低く設定するほど、毎月の基本料金を安くすることができる。ドライヤーと炊飯器と電子レンジを同時に使わないなど、一度にたくさんの電気を使わない工夫をして契約を見直せば、電気代が契約できるよ!
自宅に太陽光パネルと蓄電池をとりつける
太陽光で発電する太陽光パネルを屋根に設置すると、電気代を減らしたり、あまった電気を電力会社に売ったりできるよ。停電したときにも電気が使えるんだ。蓄電池も設置すれば、よぶんな電気をためておけるから、さらに安心だね。太陽光発電のよさを伝えて、導入できないか家族で相談してみよう。
参考リンク
HTTを担当する 東京都環境局
地球環境エネルギー部
地域エネルギー課 課長代理
萩原 健一さんにインタビュー!
萩原 健一さんにインタビュー!
萩原さんのおしごとを教えてください
地球温暖化をふせぐために、都内の家庭や会社の節電の取り組みを応援したり、再生可能エネルギーを広めたりする仕事をしています。未来の東京、未来の地球を守るという、責任ある仕事だと思って取り組んでいます。
HTTはどうしてはじまったんですか?
2022年3月に福島県沖を震源とする地震がおこったとき、首都圏で停電が発生し、電気が足りないことを知らせる警報が出されました。また、最近は海外の状況が不安定なことから、発電に使う資源の多くを海外からの輸入に頼っている日本では、今後も、必要な電気を確保できるかわかりません。
このようななか、電気を安定して確保できるように、今まで以上に電気を「へらす、つくる、ためる」HTTを進めることが決まりました。この取り組みで気候変動対策も加速できたらと思います。
都庁の夏の節電の取り組みが知りたいです
冷房時の室温は28℃を目安にしたり、すずしくすごせる服装で仕事をしたり、ろうかの照明の数を減らしたりしています。今年からは、温水洗浄便座の水をあたたかくする設定も切っています。
萩原さんが実践しているHTTはありますか?
冷蔵庫の設定温度を「中」や「弱」にしたり、テレビの明るさをひかえめに設定したりしています。夏はサーキュレーターで部屋の空気を循環させて、エアコンの設定温度を下げすぎないようにしています。あとは自分でキットを買って、窓を二重窓にしたら、窓際の暑さ、寒さがなくなりました。
わたしたちにできることを教えてください!
家の中に白熱電球や蛍光灯がないか、探してみましょう。LED電球に交換するだけで節電になります。また、家の屋根に太陽光パネルをつけて発電したり、その電気を蓄電池にためたりすることは、HTTのなかでもとくに効果があるので、ご家族に太陽光発電のよさを伝えてみてください。
みなさんが大きくなったとき、安心してくらせる地球になっているよう、一人ひとりができることを続けていきましょう。
活用が進む!再生可能エネルギー
化石燃料は、発電に使うときに地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出します。節電は、地球温暖化をくい止めるためにも大切な取り組みなのです。
東京都では節電に加えて、発電に使う再生可能エネルギーの割合を増やしています。太陽光や水、風などを利用した再生可能エネルギーは、二酸化炭素をほとんど出さず、くり返し使うことができる、環境にやさしいエネルギーです。そのうち太陽光発電は、太陽光パネルを屋根などに設置すれば発電できることから、土地がせまく、建物の多い東京にあった発電方法です。太陽光パネルを設置しておくと、停電したときに非常用の電源として使うことができるため、災害がおこったときにも役立ちます。
≪さまざまな再生可能エネルギー≫
再生可能エネルギーは、天候や時間的によって発電量が変動したり、設置や管理に費用がかかったりするなど、発電方法ごとに課題もありますが、環境にやさしいエネルギーとして、また、国内で生産できる国産のエネルギーとして、さらなる活用が期待されています。
太陽光発電
太陽光を電気にかえる太陽光パネルを設置して発電します。一般の住宅にも設置でき、家庭でも導入が進んでいます。
風力発電
風の力でブレード(羽根)を回し、その回転する力を利用して発電します。陸地のほか、強い風が吹く海の上にも設置が進みつつあります。
地熱発電
地下のマグマにあたためられた高温の蒸気や熱水を利用してタービンを回し、発電します。
水力発電
水の流れる力で水車を回して発電します。ダムを利用した大規模なものや、農業用水などを利用した中小規模のものがあります。
バイオマス発電
家畜のふん尿や生ごみ、木くずなど、動物や植物に由来する資源からつくった燃料で発電します。
≪都の施設に設置された太陽光パネル≫
参考リンク
地球温暖化についてもっと知りたい!
再生可能エネルギーについて、動画やゲームで学べる!
太陽光発電のしくみやメリット・デメリットをくわしく解説
体験できる!再生可能エネルギー
東京都では恩賜上野公園や豊洲市場など、すでに多くの施設に太陽光パネルを設置しており、今後もどんどん増やしていく予定です。しかし、エネルギーそのものを目で見ることはできないため、実感がわかない人もいるかもしれません。
そこで、みなさんにおとずれてみてほしいのが、江東区にある東京ビッグサイト(東京国際展示場)の舗装型太陽光パネルです。光るガラスのパネルと太陽光パネルを重ねたもので、昼間に太陽光パネルで発電した電気を使い、夜にガラスのパネルを光らせています。電気をためておくバッテリーの箱では、その日の発電量や二酸化炭素の削減量などがチェックできます。太陽光パネルを間近に見たり、ガラスごしに上を歩いたりすることもできますよ!
参考リンク
再生可能エネルギーをもっと身近に! 都のさまざまな取り組み
TOKYOものしり辞典
東京都内で1年間に使う電力を、すべて原油で発電したとすると
25mプール*何はい分の原油が必要?
25mプール*何はい分の原油が必要?
*長さ25m×はば12m×高さ1mのプールとして計算しています。
東京都の2019年度の電力のエネルギー消費は、約279.3PJ*でした。この電力をすべて原油でまかなったとすると、25mプール約2万4000はい分の原油が必要になります。
*PJ…1000兆Jのこと。Jはエネルギーの単位。
*実際は石炭や天然ガスなどの他の化石燃料、火力発電以外の発電方法も使われています。
一年間に使う電力のエネルギー消費は、毎日、一人ひとりが使った電気が積み重なったものです。小さなことでも日ごろから節電に取り組むことで、この量は確実に減らすことができます。今年はHTTの「Ⓗへらす」を合言葉に、みんなで協力して節電に取り組みましょう!