2022年6月号
雨の季節がやってきた!
浸水から身を守るためにできること
6月からは雨に注意!
東京都では毎年6月から7月にかけて、雨やくもりの日が多い梅雨の時期になります。梅雨の時期に降る雨は、わたしたちの生活に必要な水をもたらし、農作物を実らせるめぐみとなる一方、おそろしい災害を引きおこすこともあります。東京都も、昔からたびたび雨による災害になやまされてきました。
東京都で多いのはまちに水がたまっておこる浸水
雨が多い時期におこりやすいのが、建物などが水につかる浸水です。浸水には、おもに2つのタイプがあります。
1つ目は、川から水があふれておこる浸水です。雨は川となり、最終的には海へと流れていきますが、大雨で川を流れる水の量が増え、堤防の高さをこえたり、堤防がこわれたりすると、川から水があふれます。これを「川のはんらん」といいます。川を流れる水の量はダムなどで調整されていますが、ためられる水の量にはかぎりがあります。
2つ目は、まちに水がたまっておこる浸水です。家や商店などが集まるまちのなかでは、多くの道路が舗装されています。このため、雨は地面の中にしみこまないで側溝や雨水ますを通じて下水道管に流されるなどして、川や海へと運ばれます。しかし、大雨が降って下水道管などに水を流しきれなくなると、まちに水がたまり、浸水がおこってしまいます。
川がはんらんしておこる浸水
まちに水がたまっておこる浸水
参考リンク
浸水からまちを守る東京都の取り組み
近年、日本では毎年のように記録的な大雨が降り、短い時間に大量の雨が降る「集中豪雨」におそわれることもめずらしくありません。家や学校が浸水したらと考えると、心配になりますよね。東京都では川のはんらんをふせぐため、川の堤防をがんじょうにするとともに、川の水を一時的にためる調節池をつくってきました。また、まちに雨水がたまらないよう、浸水しやすい地域に下水道管を増やしたり、大雨のときにふつうの下水道管から水を引き入れてためておく貯留管とよばれる下水道施設の整備を進めたりしてきました。
≪過去に東京都でおこった大きな浸水の被害≫
年 | 災害名 | 東京都のおもな被害 |
1947年 | カスリーン台風 | 利根川や荒川がはんらん。足立区・葛飾区・江戸川区を中心に約12万棟の家屋が浸水した。 |
1958年 | 狩野川台風 | 神田川や目黒川などがはんらん。約46万棟の家屋が浸水し、死傷者200人以上をだした。 |
1981年 | 昭和56年7月豪雨 | 神田川や目黒川などがはんらん。新宿区や目黒区などで約1万4000棟が浸水した。 |
1993年 | 平成5年8月台風11号 | 神田川などがはんらん。約7500棟の家屋が浸水。JR品川駅では線路が水につかった。 |
2005年 | 平成17年9月豪雨 | 神田川や石神井川、善福寺川などがはんらん。中野区や杉並区を中心に、約6000棟の家屋が浸水した。 |
浸水をふせぐ貯留管と調節池
公園の下にもある! 水をためる巨大な調節池
調節池は、川沿いの公園や道路の地下など、広い空間を活用してつくられる施設です。雨などで川の水位が上がると、川と調節池をしきっている堰から調節池に川の水が流れこみ、はんらんをふせぎます。都内に27か所稼働している調節池には、あわせて25mプール約8800ぱい分の水をためることができます。2019年の東日本台風では、過去最高の21か所で洪水の水を取りこみ、調整池の下流では川があふれることはありませんでした。
地下で大活躍! 国内最大級の貯留管
下水道館は、トイレや台所などから出る汚水だけでなく、雨水も流し、まちを浸水から守る役割もはたしています。また、ふつうの下水道管だけでは雨水が流しきれなくなりそうなときには、水をためて浸水をふせぐ貯留管が活躍します。このうち和田弥生幹線は、直径8.5m、全長2.2kmにもなる国内最大級の貯留管です。たびたび浸水の被害にあっていた神田川、善福寺川沿いの地域を守るため、地下50mというとても深い場所につくられました。2019年の東日本台風では満水となり、浸水の被害を最小限におさえました。
参考リンク
東京都でおこった過去の水害についてまとめてあるよ
調整池って? もっとくわしく知りたい!
和田弥生幹線の内部をVR(バーチャルリアリティ)で探検!
縁の下の力持ちとして活躍する
東京都下水道局 施設管理部 小泉 柊太さんにインタビュー!
小泉さんのおしごとを教えてください。
東京都内に設置された下水道管や、浸水からまちを守る雨水貯留施設などがしっかり役目をはたせるよう、てんけんや修理などをする維持管理のしごとをしています。そのなかには、2020年8月から使われている、渋谷駅の雨水貯留施設もあります。
渋谷駅の雨水貯留施設は、どんな施設ですか?
渋谷は名前のとおり「谷」にあり、強い雨が降ると雨水がたまりやすい場所です。渋谷駅の雨水貯留施設は、まちを浸水から守るため、雨水を一時的にためておく施設としてつくられました。渋谷駅東口の地下25mという深い場所にあり、25mプール13ばい分の水をためることができるんですよ。
おしごとでたいへんなことや、やりがいを教えてください。
東京23区にある下水道管をつなぎ合わせると、東京とオーストラリアのシドニーを往復できるほど長く、道路の下に入っていて地上から見ることができない下水道管を維持管理するのはとてもたいへんです。苦労することもありますが、東京都の縁の下の力持ちとして、下水道管をしっかり維持管理することで、浸水をふせぎ、みなさんの安全を守っているということにやりがいを感じています。
浸水から身を守るために、わたしたちにできることは何ですか?
雨水ますがつまっていたり、入口がふさがったりしていると、雨水を下水道管に流せず、浸水を引き起こす原因になります。雨水ますの上に物を置かないようにしてください。また、雨の水は低い場所に集まるので、強い雨が降ったときには、地下室などの低い場所にはぜったいに行かないでください。自分にできることから、浸水へのそなえをはじめましょう!
※インタビューは2022年6月現在のものです。
日ごろからのそなえが命を守る!
このように、東京都ではさまざまな浸水の対策をおこなっていますが、それでもすべての被害をふせぐことはできません。浸水から身を守るためには、わたしたち一人ひとりの、日ごろからのそなえが大切です。避難するときに持っていくものを事前にまとめ、避難するときに気をつけることを知っておけば、いざというとき、落ち着いて行動することができます。
準備しておくと安心!
避難するときに必要なものを、リュックサックなどにまとめておきましょう。必要なものは家庭によって異なるので、家族でなにが必要か、話し合ってみてください。また、保存がきく食品や生活用品などをすこし多めに買っておくなど、日常生活のなかで備蓄を心がけるようにしましょう。
必要な物の例
食事に必要な物
食事に必要な物水、レトルト食品、缶づめ、ビスケット、缶切り、カセットコンロ、ガスボンベ
避難後の生活で必要な物
現金、印鑑、預金通帳、薬、歯みがき、ウエットティッシュ、消毒液、着がえ、毛布、使い捨てカイロ、簡易トイレ、おむつ、生理用品
身を守るために必要な物
ヘルメット、マスク、軍手、ライター、ろうそく、懐中電灯
情報を集めるために必要な物
地図、携帯ラジオ、携帯電話の充電器、乾電池
避難するときはここに注意!
浸水がおこりそうなときは、区市町村から発令される「警戒レベル」を確認してください。5段階に分かれている警戒レベルのうち、3で高齢者や障がい者は避難し、4では全員避難することとされています。避難する場所は住んでいる地域によって決まっているので、調べておきましょう。
浸水がおこる前に避難することが大切ですが、もしまちが浸水しているなかで避難することになったら、こんなことに注意してください。
浸水しているなかで避難するときには…
地下室や半地下からすぐに出て!
地下室や、道路より低い位置にある半地下は浸水しやすいよ。浸水すると、水の圧力でドアが開かなくなって出られなくなる可能性もあるんだ。すぐに地下室や半地下から避難してね。
1人で避難しない!
なにかあったとき、1人だと気づいてもらえない。ぜったいに2人以上で行動しよう。
長ぐつははいちゃダメ!
長ぐつをはくと中に水が入って重くなり、動きづらくなる。はきなれたスニーカーなどを選ぼう。
夏でも長そで、長ズボン!
風で飛んできたり、水の中を流れてきたりした物にぶつかってけがをしないよう、はだがなるべく出ないかっこうをしよう。てぶくろもあるとより安心だよ。
雨具はかさより雨がっぱ!
折れたり、飛ばされたりしやすいかさではなく、雨がっぱで雨をふせごう。上下に分かれているものが動きやすいよ。
マンホールや側溝に注意!
浸水のときは、マンホールや側溝のふたがはずれていることがあるよ。落ちてしまわないよう、長い棒やかさなどで安全を確認しながら歩こう。
無理して避難所に行かない!
ひざより高い位置まで浸水していたり、外が暗かったり、水の流れが強かったりしたら、避難所まで行くのはかえってあぶないよ。家の2階など、今いる場所でもっとも高い場所や、近くにあるがんじょうな建物などに移動してね。
浸水をはじめ、災害はいつおこるかわかりません。家族とも話し合い、できることを今すぐはじめましょう!
参考リンク
浸水へのそなえもばっちり!災害時に役立つアプリ
災害にそなえて備蓄をはじめよう!
大雨が降ったときに危険な場所はどこ? 調べてみよう!
パソコン・スマートフォンで雨の降りかたをチェック!
東京アメッシュ
雨の情報をチェックすることも、被害をふせぐことにつながります。東京都下水道局が配信している降雨情報、東京アメッシュでは、東京とその周辺でどれくらいの雨が降っているのか、リアルタイムで見ることができます。150m四方というとても細かい区画ごとに、降りはじめのわずかな雨から災害級の大雨まで確認できます。
- 都内ほぼ全域を、150m四方ごとに、雨の強さで10段階に色分けして表示
- 1mm以下のわずかな雨もキャッチ
- 2時間前から現在までの降雨状況を再生できる
- (スマートフォン版サイト)GPS機能で現在地を表示
- (スマートフォン版サイト)好きな地点を2か所登録できる
参考リンク
TOKYOものしり辞典
川ってなんだろう?
みなさんが「川」と聞いて思いうかべるのは、どんな川ですか。通学路で見かける小さな川。森のなかを流れるすんだ川。海へとそそぐ大きな川……。「川」は、その人の身近にある川や、川にまつわる思い出によって、大きく変わってきそうです。家族や友だちにたずねてみると、自分とはまったく違う川のイメージや、特別な川の思い出を聞くことができるかもしれません。
人によって思いうかべる「川」はさまざまですが、川を管理するための国の法律では、川は一級河川と二級河川、準用河川のことを指します。これらは災害がおこったときに大きな被害をだす可能性があったり、上水道や農業、工業、発電などに広くつかわれていたりして、わたしたちのくらしに大きな影響をあたえるとされる川です。影響の範囲や大きさによって一級、二級、準用に分けられ、それぞれ国、都道府県、区市町村が管理しています。
東京都内には92の一級河川、15の二級河川、20の準用河川があります。たとえば多摩川は一級河川、目黒川は二級河川です。みなさんの家や学校の近くにある川はどうですか。「通学路にあるあの川って、なんて名前なのかな」と思ったら、まずは身近な川の名前を調べることからはじめてみましょう!
参考リンク
都内の一級河川と二級河川はここ!