2022年8月号
東京2020オリンピック・パラリンピックをふり返る
~選手・ボランティアの活躍と未来へつなぐレガシー~
大会から1年!選手や、大会をささえたボランティアたちの活躍をふり返るとともに、活用が進む東京都のスポーツ施設について紹介します。
オリンピック卓球で3つのメダルを獲得した伊藤美誠選手へのスペシャルインタビューも大公開!
東京でオリンピック・パラリンピック
どんな大会だったの?
今から1年前の夏。東京でオリンピック・パラリンピックが開催されました。東京は1964年にも大会の舞台となっており、57年ぶり2回目の開催です。新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期となったものの、世界中から集まった選手たちが熱い戦いをくり広げ、人びとに大きな感動をあたえました。史上最多となった女子選手の割合、バリアフリーを考えて整備された施設、リサイクルされた金属からつくられたメダルなど、多様性や環境を大切にする大会としても注目を集めました。
大活躍! 日本選手団
オリンピックでは、日本は史上最多の58個のメダルを獲得しました。新しく競技に加わった空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンで多くの日本人選手が活躍し、スケートボードでは日本史上最年少となる12歳のメダリストも誕生しました。また、アメリカとの激闘を制して金メダルを獲得した女子ソフトボールをはじめ、男子野球、卓球の混合ダブルスなど、団体やペアの競技も 盛り上がりました。
パラリンピックでも、新しく競技に加わったバドミントンをはじめ、水泳、車いすテニスなどで日本のメダル獲得があいつぎ、過去2番目に多い51個のメダルを獲得しました。火花が散るほどはげしくぶつかり合う車いすラグビー、音だけをたよりにプレーする5人制サッカー、障がいに応じてさまざまな方法でボールを投げるボッチャ……はじめて知る競技のおもしろさや、手に汗にぎる戦いの数かずに、わくわく、どきどきした人も多いのではないでしょうか。
東京2020オリンピック・パラリンピックにまつわるデータ
オリンピック | パラリンピック | |
日本選手のメダル数 | 合計58個(過去最多) 金27個 銀14個 銅17個 | 合計51個(過去2番目) 金13個 銀15個 銅23個 |
参加国・地域数 | 206カ国・地域 (難民選手団含む) | 162カ国・地域 (難民選手団含む) |
競技数 | 33競技(うち新競技5)* | 22競技(うち新競技2) |
大会に使われた施設数 | 43施設(うち新たに建てた施設は6施設) | 43施設(うち新たに建てた施設は6施設) |
ボランティアの人数 | シティキャスト:1万1913人(のべ2万676人) フィールドキャスト:7万970人(のべ7万6186人) | シティキャスト:1万1913人(のべ2万676人) フィールドキャスト:7万970人(のべ7万6186人) |
卓球の伊藤美誠選手にインタビュー!
東京2020オリンピックで、混合ダブルスで金、女子団体で銀、女子シングルスで銅の3個のメダルを獲得した卓球の伊藤美誠選手。夢を叶えるために大切にしていることを聞きました。
2020大会は東京での開催。特別な思いは?
特にオリンピックの力を強く感じたのは水谷準さんとの混合ダブルス。決勝戦の最初は負けていたのに、「オリンピックは何が起きるか分からない」という思いがこみ上げて負ける気がしなくて。無観客なのにスタンドから観客の声が聞こえるような不思議な感覚になり、「いける!」と思いました。優勝できてとにかくうれしかったです。
シングルスの銅メダルで流した悔し涙が印象的でした。
混合ダブルスの翌日にシングルスがあったので、睡眠時間が短くて、状態はかなり辛かったです。決勝で日本VS中国なら盛り上がったのに、私が負けたために決勝は中国選手同士の対決に。そう思ったら悔し涙がこぼれました。
オリンピックを通して得た学びは?
2歳から卓球を始めて、夢はオリンピックで優勝することでした。混合ダブルスでその夢は達成できたけれど、シングルスは3位>。このままで終わるわけにはいかない、と思いました。
実は、オリンピック後の4か月ほど目標が掲げられず、悩みに悩みました。「次はパリオリンピック」とすぐに切り替えられると思うかもしれませんが、目標を決めるには気持ちも覚悟もいる。そんな簡単に決められるものじゃないんです。
でも、オリンピック後の試合で気持ちが入りきれない状態が続き、「大きな目標がないからだ」と気づいたんです。そこで初めて「パリオリンピックでシングルス優勝」という目標を決め、そこから試合を楽しめるようになりました。「人は大きな目標があるからこそ、目の前の小さなことにも頑張れるんだ!」と学びました。
好きなものをやり抜くうえで、大切なことは?
卓球選手だった母からサポートも受けましたが、卓球を始めたのも、オリンピックを目指すと決めたのも全て私。母から「卓球をやったら?」と言われたことは一度もありません。
スポーツであれば、試合に出場して、勝ちたいと思うのか。中学受験なら、本当にその学校に行きたいと思うのか。親に言われたからではなく、まずは自分がどうしたいのかと強く思わないと頑張るのは難しい。自分の気持ちに嘘をつかないことが大事だと思います。
厳しい練習はどのように乗り越えられるか?
子どものころは、毎日8~9時間練習して、時間を表に書き込んでいました。「今日はこれだけ練習したぞ!」と目で見えることが嬉しくて、自信にもつながりました。
今は、自分への「ご褒美」を決めるようにしています。この海外遠征が終わって帰国したら、「お寿司やお肉を食べに行こう」「洋服を買おう」と、インスタグラムで検索しています(笑)。「頑張ったら、ご褒美が待っている!」とモチベーションを上げています。
大事な本番で、自分の能力を引き出すためには?
私は、大舞台が大好きなんです。予想外の展開が自分のほうに転がったら楽しいじゃないですか。不安や怖さよりも、「自分にプラスのことが起きる!」とポジティブに考えること。習い事でも受験でも、本番の大舞台こそワクワク感を楽しんだ方が勝ちです。
私も夢に向かって頑張るので、みなさんも一緒に頑張りましょう!
取材協力:関西卓球アカデミー
どんな人たちが大会をささえたの?
大会での選手たちの活躍は、世界中の人びとに夢や希望をあたえ、わたしたちにスポーツの楽しさや、目標に向けて努力することの大切さなどを教えてくれました。
そんなオリンピック・パラリンピックを東京で開催できたのは、大会スタッフやボランティアなど、多くの人の努力と協力があったからです。会場などの建設にかかわる人、選手たちの健康や安全を守る人、料理をつくる人、通訳をする人、必要な物を運ぶ人など、さまざまな職業の人が関わりました。また、約8万人のボランティアたちは、選手の歓迎や競技の準備、清掃など、多くの場面で大会をささえました。
自分ががんばりたいこと・自分にできることってなんだろう?
だれもがオリンピック・パラリンピックで活躍するような選手になれるわけではありません。運動が苦手という人や、他のことに興味がある人もいますよね。ですが、目標に向けて努力をつづけることは、だれにとっても大切なことです。また、ボランティアのように、他の人や社会のために活動することも、選手として活躍するのと同じようにすばらしいことです。みなさんも自分ががんばりたいことはなにか、自分にできることはなにか、考えたり、友だちと話し合ったりしてみましょう。
東京2020オリンピック・パラリンピックで ボランティア
小平市の聖火ランナーとして活躍した 古田 雅人さんにインタビュー!
ボランティアに参加しようと思ったきっかけはなんですか?
今勤めている会社に就職する前、アメリカに留学したことがあります。当時は英語がほとんど話せず、足に障がいがあって車いすを使っていることもあり、アメリカで生活できるかが不安でした。しかし、留学先の人たちがあたたかく迎えいれ、サポートしてくれたおかげで、充実した留学生活を送ることができました。その恩返しとして、今度は自分が海外から来た人たちをサポートしたいと思い、ボランティアに応募しました。
ボランティア活動の内容を教えてください。
東京都庁の大会に関わる展示スペースに来場された方の案内や写真撮影のお手伝い、空港で海外の選手の見送りを担当しました。どちらの活動でも積極的に声をかけ、精一杯 取り組むなかで、相手が笑顔になってくれたことがうれしかったです。
小平市の聖火ランナーとして、どんな経験をしましたか?
感染症の影響で公道を走ることはできませんでしたが、点火セレモニーに妻と参加しました。緊張しましたが、楽しみながら聖火をつなぎました。セレモニーを中継で見た人たちから「元気をもらった」と声をかけられ、ほこらしい気持ちになりました。
とくに印象に残っている競技や試合はありますか?
車いすバスケットボールや車いすラグビーなど、パラリンピックの種目が印象に残っています。障がいをもつ選手たちが活躍するすがたに勇気をもらいました。スポーツをきっかけに、より差別のない、障がいのある人もない人も、おたがいを尊重し、支えあえる社会になるよう願っています。
ボランティアの経験をもとに、子どもたちへアドバイスをお願いします。
足に障がいのある私にボランティアや聖火ランナーができるのか、はじめは不安でした。しかし実際にやってみると、ありがとうと感謝の言葉をもらえることがうれしく、やってよかったと思えました。小さな一歩でも、踏みだすことで自信につながることがあります。みなさんも失敗を恐れず、色々なことにチャレンジしてください!
大会の舞台でスポーツに挑戦!活用が進む大会のレガシー
オリンピック・パラリンピックは、「開催して終わり」ではありません。東京都では、整備したまちや施設、スポーツに親しむくらし、ボランティア精神など、大会の残したもの(レガシー)を活かし、発展させるためのさまざまな取り組みをしています。
このうち今大会にあわせて新しくつくられた都のスポーツ施設は、2022年8月現在、5か所がスポーツ大会の会場として、また、都民がスポーツに親しむ場などとして活用が進んでいます。アーチェリーやホッケー、カヌーなど、ほかの場所ではなかなかできないスポーツも体験できますよ。大会を観戦して「新しいスポーツに挑戦してみたい!」「スポーツを間近で見てみたい!」と思ったキミ。さっそく、それぞれの施設のホームページをチェックしてみましょう!
活用が進む都の新しいスポーツ施設
施設名 | 施設の概要 |
有明アリーナ | さまざまなスポーツの大会が開かれるほか、コンサートやイベントの会場、都民のスポーツの場としても使われる。 |
海の森水上競技場 | ボートやカヌー、トライアスロン、ドラゴンボートなどの練習や、大会の会場として使われる。さまざまな水上スポーツ体験やヨガなどのフィットネス体験もできる。 |
カヌー・ スラロームセンター | カヌーをはじめとする水上スポーツの練習場や、大会の会場として使われる。水上スポーツを体験できるイベントも開催。 |
夢の島公園 アーチェリー場 | アーチェリーなどの大会や、レクリエーションなどで使用できる。大会などがないときには、広い芝生で自由に遊ぶことができる。 |
大井ふ頭中央海浜公園 ホッケー競技場 | ホッケー大会の会場や練習場となる。都民がホッケーやフットサル、ラクロスなどを楽しむ場としても使われる。 |
TOKYOものしり辞典
東京2020オリンピックの 聖火リレーがスタートした場所はどこ?
聖火リレーは2021年3月25日、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」でスタートし、121日間かけて全国をまわりました。
東京2020オリンピック・パラリンピックは、2011年におきた東日本大震災の被災地(岩手県・宮城県・福島県)に元気や感動をとどけ、復興への歩みを世界に発信する、復興オリンピック・パラリンピックでもありました。そのため、大会直前の2021年6月には、岩手県・宮城県・福島県、そして2016年の熊本地震により大きな被害を受けた熊本県の復興のシンボルとなる計4本の樹木を、競技会場である有明アリーナ(東京都)に植えました。大会最初の競技となったソフトボールの初戦も、福島県の福島あづま球場で開かれました。また、表彰式では被災地で育てられた花で作ったブーケが渡され、選手村の食堂では被災地産の食材を使った料理が提供されるなど、選手をはじめ世界中の人びとと被災地をつなぐ機会がもうけられました。
東京都と被災地との交流は、大会後もスポーツなどを通じてつづけられています。
参考リンク
復興オリンピック・パラリンピックとしての取り組みをくわしく紹介