2023年6月号
これからの地球のために不可欠!
「再生可能エネルギー」ってなんだろう
みなさんは、「再生可能エネルギー」という言葉を聞いたことがありますか? 代表的なものに、太陽の光を電気に変えるソーラーパネルを使った「太陽光発電」があります。みなさんも、屋根の上にソーラーパネルをつけている家を見たことがあるでしょう。このほかにもいろんな種類があるようです。再生可能エネルギーって一体どんなもの? そして、どんな特徴があるの? そうした疑問について、科学実験を分かりやすく紹介するサイエンスショーで人気のサイエンスインストラクター、阿部清人先生にお話を聞きました。
再生可能エネルギーはどうして必要なの? 3つの大きな特徴
そもそも人間は、エネルギーがないと動けません。体の中に、食べ物などを取り入れて活動しています。そして毎日、生活していく中でもさまざまなエネルギーが必要です。電灯をつけたり、テレビを見たり。冷蔵庫やエアコン、パソコン、スマホなども電気がないと使えません。 では「再生可能エネルギー」とはどういうものでしょうか。再生可能エネルギーには3つの大きな特徴があります。
❶二酸化炭素を出さない
まず一つ目は、「二酸化炭素を出さない」ということ。今、世界中で「地球温暖化」が大きな問題になっています。この100年で平均気温は1.1°C上昇しました(日本でも平均気温が1.3℃上昇しました)。世界では、地球温暖化による危険な気候の変化をより少なくするため、1.5°Cの上昇におさえることを目標にしていますが、このまま何もしないままだと、2100年には気温が最大5.7℃上昇する可能性があると指摘されています。
温かくなると、氷河が溶けて海面が上昇します。すると南太平洋にある小さな島がなくなってしまいます。それだけではありません。大雨や嵐、記録的な暑さや寒さといった異常気象も温暖化が原因となっています。また、平均気温が2℃上がると昆虫の18%、植物の16%、動物の8%が生息域の半分以上を失うとされており、地球の生態系にも影響を及ぼします。
そしてこの温暖化を引き起こしているのが、二酸化炭素などの「温室効果ガス」です。今、私たちの暮らしは、電気などのエネルギーで成り立っています。しかし、こうしたエネルギーをつくるために、人類は産業革命以降、石油や石炭などを燃やし続けてきました。そのために、二酸化炭素の量が急激に増えてしまったのです。地球温暖化対策として、二酸化炭素を出さないエネルギーの利用に変えていくための最大のカギが、再生可能エネルギーなのです。
❷輸入に頼らない「国産のエネルギー」をつくれる
次に「国産である」ということ。日本では、石油や石炭、天然ガスなどの燃料は海外からの輸入に頼っています。海外に頼りすぎていると、安定的にエネルギーを確保することが難しくなります。たとえば今、ウクライナとロシアの間に戦争が起きています。そのために燃料価格が世界的に上昇したことなどから、家庭で使う電気代も上がり、そのほかのさまざまな物価も上がっています。でも再生可能エネルギーであれば、日本の国内でつくることができ、海外の影響を受けることはありません。
一般家庭でもソーラーパネルを屋根に設置するなどして、自宅で電気をつくることができます。また、蓄電池と組み合わせることで夜間も電気が使えるようになります。こうした設備があれば、災害で停電になった時などにも、自宅で電気を使うことができます。
❸エネルギー源が「なくならない」
そして三つ目が、エネルギー源が「なくならない」ということ。エネルギーを作る方法の一つに、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やす方法があります。しかし、このまま使い続けると、地中に埋まっている石油や天然ガスはいずれなくなってしまうと言われています。でも、再生可能エネルギーを作り出すのは、太陽光や水、風力などで、いくら使っても無くなることはありません。
再生可能エネルギーにはどんな種類があるの?
再生可能エネルギーには大きく分けて5種類があります。それが「太陽光」「風力」「水力」「バイオマス」「地熱」です。それぞれについて説明します。
❶太陽光発電
太陽光を電気にかえる太陽光パネルを設置して発電します。一般の住宅にも設置でき、家庭でも導入が進んでいます。
❷風力発電
風の力でブレード(羽根)を回し、その回転する力を利用して発電します。
❸水力発電
水の流れる力で水車を回して発電します。ダムを利用した大規模なものや、農業用水などを利用した中小規模のものがあります。
❹バイオマス発電
家畜のふん尿や生ごみ、木くずなど、動物や植物に由来する資源からつくった燃料で発電します。
❺地熱発電
地下のマグマにあたためられた高温の蒸気や熱水を利用してタービンを回し、発電します。
現在進行形!新しい技術と再生可能エネルギー
❶貼ったり折り曲げたりできる?!ペロブスカイト太陽電池
東京都は2022年冬から、積水化学工業株式会社とフィルム型ペロブスカイト太陽電池という新しい太陽電池の共同研究を開始しました。一般的なシリコン系太陽電池は、割れやすいためガラスに貼り付けてシートではさむ構造になっており、折り曲げることができず、ある程度の重さもあります。ペロブスカイト太陽電池は印刷技術によりたくさん生産できることが期待されています。折り曲げやゆがみに強いという性質のほか重さもシリコン系太陽電池の10分の1くらいに軽くできます。軽くて柔軟なので、これまでの太陽光パネルが設置できなかった重さに弱い屋根や、曲面にも設置できます。東京都では、下水道局森ヶ崎水再生センター(東京都大田区)にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置し、発電効率の測定や腐食にどれだけ耐えられるかなどを検証していきます。
❷強い海風を利用!洋上風力発電
新しい発電方法の研究や実用化も進んでいます。日本は、海に囲まれている島国である、という特徴もあります。このため、海に風力発電所を作る洋上風力発電には大きな可能性があります。
コラム:昼も夜もない!宇宙で太陽光発電
さらに太陽光発電では、宇宙で発電しようという「宇宙太陽光発電システム」の研究も、経済産業省とJAXA(宇宙航空研究開発機構)とで行われています。宇宙で発電所を作るために多額の費用がかかることや、効率的に電気を送る技術の開発などに課題がありますが、究極の太陽光発電として大きな期待がかかります。
今後の課題や、私たちにできることは?
ロシア・ウクライナ問題をきっかけとして、世界では自分の国で確保できるエネルギーへの関心が今まで以上に大きく高まりました。それが「再生可能エネルギー」です。日本は人の住んでいない広大な平地は少ないですが、自然のエネルギー資源が豊富という特徴があります。エネルギーの自給率を高めるとともに、地球温暖化を食い止めていくためにも、再生可能エネルギーを活用していくこと、一人ひとりができることを考え、取り組んでいくことが必要です。
太陽光や風力は天候や季節によって発電量が変わることへの対応として、多いときにつくられた電力をためる蓄電システムを電力網の中でも確立されると、安定性を確保することができます。住宅用の蓄電池はすでに大きく普及しはじめていますが、電力網の中で活用が期待される蓄電システムについても今、技術革新が大きく進んでいます。
自宅の屋根にソーラーパネルを設置する。太陽の光で発電した電気をためることができる蓄電池をつけて、電気を夜にも使えるようにする。ソーラーパネルがつけられない人は、再生可能エネルギーの割合の高い電気を供給する電力会社から電気を買う。自宅で再生可能エネルギーを利用する方法はさまざまあります。
また、太陽光電池を使ってスマホを充電したり、照明として使える機器もあります。屋根にソーラーパネルをつけたソーラーカーでぜひ遊んでみてください。ソーラーカーは、効率の良い角度で太陽にパネルを向けたときに速く走ることができます。そうした体験をしてみると、エネルギーをより身近に感じることができるでしょう。
なにより、エネルギーを大切に使うことが重要です。そのためには、まず無駄な電気は使わないということ。誰もいない部屋の電灯を消すことやエアコンのフィルターを掃除することなど。みなさんもぜひ、家の中でできる「Hへらす」の取り組みを実行してみてください。