2023年7月号
都内の施設で夏休みの「自由研究」のヒントを見つけよう
もう少しで夏休み。もう自由研究のテーマは決めましたか? 東京都には、自由研究の題材がみつかりそうな施設がたくさんあります。そのひとつ「江戸東京たてもの園」を紹介しましょう。東京都小金井市にある江戸東京たてもの園の広大な敷地には、江戸時代から昭和中期にかけて建てられた、貴重な歴史的建造物が30棟も展示されています。住宅やお店屋さんまで、当時の人々が実際にどんな生活や商売をしていたのか分かる道具や、売られていたものも再現されていて、昔の人たちのくらしが、いきいきと伝わってきます。
さあ、中をのぞいて自由研究のテーマにつながる疑問や気になるところを見つけましょう。
昔の生活を想像し、今のわたしたちの生活と比べてみよう
まずは、昔の人たちが実際に住んでいた家を見てみましょう。西ゾーンの一番奥にあるのが、大きな農家の「吉野家」です。吉野家は、江戸時代に野崎村(現在の三鷹市野崎)をとりしきった名家だったといわれています。かやぶき屋根の大きな建物は江戸時代後期に建てられたもので、小金井市指定有形文化財になっています。
正面やや左側に、瓦屋根がついた立派な玄関がありますが、ここは特別なお客様を迎えるときだけ使い、家族はふだん建物右側にある大きな引き戸(大戸口)から出入りしていました。家の中に入ると土を固めた広い土間が広がり、一段上がった板の間に家族が集まる囲炉裏があります。
この家は昭和30年代まで人が住んでいたものを「移築」。150年以上前の江戸時代後期の建物ですが、室内の生活用具はそのころのものが展示されています。家族のくらしの場であるとともに立派な玄関や客間など、たまに来るお客様をもてなすことも考えたつくりになっています。
自由研究の視点
▷窓は何で作られているの?
▷床材はどんな素材が使われているの?
▷屋根は何でできてるの?雨漏りはしないの?
▷どうやって寒い冬や暑い夏を過ごしたの?
▷電気のない時代、どうやって部屋を明るくしたり、
料理をしていたの?
▷どこで寝ていたの?
▷虫よけ対策はしていたの?
くらしを支える道具に注目してみよう
西ゾーンの入り口、エントランス広場の近くにあるのが、「田園調布の家(大川邸)」です。現在の東京都大田区田園調布に1925年(大正14年)に建てられた洋風の住宅で、当時鉄道省の技師が、家族4人とお手伝いさんの合計5人で住んでいました。都心から離れ、働く人の心が休まるように「田園のような町に」という考え方から計画された町の開発は、現在の田園調布の町並みにも受け継がれています。
大川邸は全室が洋室となっていて、どの部屋も窓が広く、明るい日がさしてきます。吉野家とちがって客間はなく、家族が中心の生活を重視したすてきな設計です。
リビングルームにはピアノが置かれ、台所には氷冷蔵庫もあります。電気冷蔵庫が家庭に広がる昭和30年代までは、上の段に毎日氷を入れ、その冷気で下の段の食品を冷やす仕組みの、この氷冷蔵庫が使われていました。台所のすぐ隣には、当時住み込みで勤めていたお手伝いさんのお部屋もありますよ。
コラム:これは何でしょう?
実はこれは、昔のアイロン。電気アイロン同様に布地のしわを伸ばすための道具ですが、丸い形の鉄製の器の中に炭火を入れて熱して使います。木製の柄の部分をつかんで、適度な温度になった器の重みで布地のしわを押し伸ばすように使いました。こうした、一見使い方のわからない道具に注目して、調べてみるのもよいかもしれません。
自由研究の視点
▷あなたが住んでいる町には、昔なにがあったのか調べてみよう
▷氷冷蔵庫はどれくらいの間冷やせるの?
氷はどこで入手していたのか調べてみよう
▷ミシン、スピーカーや電話など、電化製品の昔の姿を
調べてみよう
人々のくらしを支えた昔のお店
東ゾーンの中央には「下町中通り」と名付けられた通りがあり、この道に沿って商店街が再現されています。
通りの突き当たったところにはひときわ目立つお寺のような大きな屋根の建物があります。これが、1929年(昭和4年)に建てられた「子宝湯」という銭湯です。まるで、スタジオジブリのアニメ映画「千と千尋の神隠し」に出てきたお風呂屋さんのようです。
「千と千尋の神隠し」と言えば、薬湯を調合するキャラクター釜爺(かまじい)が働く部屋には壁一面に小さな引き出しが並んでいたのを覚えていますか? そのイメージのヒントになったと言われる棚が、同じ通りの「武居三省堂」(文具店)にあります。
また、下町中通り入り口に展示されている車両は渋谷と新橋をつないでいた路面電車「都電7500形」で、これも乗ってみると、「千と千尋の神隠し」に出てきた電車みたいに思えてきます。
話を子宝湯に戻しましょう。昭和初期の日本では、お風呂がある家は多くありませんでした。そのため温泉の大浴場のように大きな浴そうがある「銭湯」が町にたくさんあり、お金を払って入っていたのです。
壁にある看板やポスターも昭和30年代の様子を再現してあります。女湯には、赤ちゃんを世話できるようなベビーベッドも! お母さんが風呂に入るときに、知り合いなどに自分の赤ちゃんを見てもらっていたそうです。ご近所さん同士、銭湯で子どものお世話をして助け合っていたんですね。
江戸東京たてもの園には、このほか和傘問屋、乾物屋、荒物屋などが移築されていて、まるでタイムスリップしたかのような気分が味わえます。
「丸二商店」や先ほど釜爺(かまじい)の部屋のイメージのヒントになったと紹介した文具店「武居三省堂」は、建物の前面が銅板やタイルで覆われた「看板建築」と言われる造りになっています。1923年(大正12年)に、死者・行方不明者10万人以上という大きな被害が出た「関東大震災」が東京を中心とした地域で起こりました。看板建築は、その後建てられた木造の商店で、火災でも燃えにくいように正面に銅板やタイルをはったのです。
自由研究の視点
▷保存食は今、どう姿を変えている?
▷昔はあって、今はあまり見かけないお店を探して調べてみよう
▷お会計はどうやってしていたの?
▷重さや量を計測する量り売り。
どうやって重さを量っていたの?
▷家に電話がない時代、どうやって遠くの人と
連絡を取っていたの?
▷銅板はどうして緑色なの?
建物や展示物を見ていくと、ゾウやライオン、ミミズク(ふくろうの一種)、ツル、チョウなどいろいろな生き物のデザインがあちこちで見られます。どのような生き物がどんなところに隠れているのか、調べてみるのもおもしろいですね。
取材協力:江戸東京たてもの園
都内の施設に遊びに行ってみよう
東京都には興味を広げられる施設がたくさんあります。みなさんの自由研究のテーマもたくさん見つかりそうですね。自由な発想で自由研究のヒントを見つけ、あなただけの発見をまとめてみましょう。
▶上下水道について調べてみよう
「水の科学館」(江東区有明)
みなさんが毎日使っている、なくてはならない水。水は一体どこで生まれて、どのようにしてみなさんのもとに届くのでしょう。水の誕生のヒミツと大切さを学べる施設です。
「水道歴史館」(文京区本郷)
世界有数の上質な「東京水」。江戸時代から現代にいたるまでの水道の歴史と、安全でおいしい水をみなさんのもとへ届けるための水道の技術・設備に関わる展示をしている施設です。2023年7月15日から子ども向けプログラムも開催予定。
「虹の下水道館」(江東区有明)
普段入ることのできない下水道管やポンプ所、水再生センターを再現した「見える下水道のまち」を舞台に、下水道の役割や水環境の大切さを楽しみながら学べる体験型施設です。
▶動物には生きる工夫がいっぱい!
動物園や水族館は小さい子ども向け、と思っている人はいませんか? 動物たちには生きていくために進化した、たくさんの特徴があります。動物園はまるで「動く図鑑」。至近距離で動物たちの生態のヒミツにせまりましょう。
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▶植物を観察できる
「夢の島熱帯植物館」(江東区夢の島)
ガラス張りのドーム内に1000種類を超える熱帯植物を育成し、ジャングルを再現! 食虫植物や小笠原諸島の固有種など珍しい植物も観察できます。
7月19日から夏休みの自由研究向け企画展「食虫植物と熱帯の”ふしぎ”ないきものたち展」を開催予定。
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▶科学の面白さを発見
「多摩六都科学館」(西東京市)
世界最大級のプラネタリウムドームをはじめ、「チャレンジの部屋」「からだの部屋」「しくみの部屋」「自然の部屋」「地球の部屋」のテーマで、体験しながら科学の面白さを発見できる施設です。