2023年7月号
東京都を支える仕事❶ 博物館にいる「学芸員」ってどんな仕事?
国内外の絵画や彫刻を集めた美術館、歴史的に貴重な物が展示される歴史博物館、科学技術についてよく分かる科学博物館など、価値のあるものを目の前で見られたり知りたかったことに出会える博物館を訪れるとワクワクしますね。こうした施設のなかには「学芸員」という資格を持つ人が働いていることがあります。学芸員って具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。学芸員になるにはどうしたら良いのでしょうか。江戸時代から昭和にかけての貴重な建物を集めた「江戸東京たてもの園」(東京都小金井市)で学芸員として働いている、丸山はるかさんにお話を聞きました。
学芸員ってどうすればなれるの?
「学芸員」は、博物館に勤める専門職員で、文部科学省の行政機関である文化庁が認定する国家資格です。ここでいう“博物館”というのは、「博物館法」という法律で定められたもので、歴史博物館、科学博物館などのみなさんが聞いたことがあるような博物館のほか、美術館、動物園、水族館、植物園などさまざまな種類の施設が含まれています。
こうした施設で、資料を集め、その保存のためのさまざまな仕事を行い、展示をしたり、パネルや解説書を作ったりして施設を訪れる人などに広くその価値を知ってもらう仕事をしているのが学芸員です。美術や歴史、動植物などの幅広い分野があり、それぞれの分野で深い専門的知識が必要で、専門分野での研究などにも取り組んでいます。
丸山さんは、「私は学芸員の仕事について中学、高校時代はあまりよく知りませんでした。ただ、美術館が好きだったので、資格がとれる大学に進もうと思いました。一方で本も好きでしたので、図書館に勤めるために必要な図書館司書の資格も大学時代に取りました。実は、最初は、江戸東京博物館の図書館司書として採用されたんです」と話してくれました。
その後、司書として働いているうちに、博物館で中心的役割を担い、専門的に研究をしている学芸員の仕事を近くで見て興味が深まったと言います。「そんなときちょうど学芸員募集があったため、手を挙げました」と丸山さん。
「学芸員になるには、好きなことだけではなく、幅広い分野に好奇心を持つことが必要です。あとは、自分の興味と相性のいい博物館と出会って、専門知識を深めていくことが求められます」とアドバイスしてくれました。(このほか、自治体が設置する施設では、自治体職員などとなるための試験を受ける必要がある場合があります。)
深い専門知識で博物館の魅力を伝える
では丸山さんは実際にどんな仕事をしているのでしょうか。
江戸東京たてもの園では、学芸員は調査研究のほかに施設の運営、展示に関する資料の整理や特別展示の企画などの業務があり、それぞれ専門的な知識を持って仕事や研究をしています。丸山さんの担当は「教育普及」。丸山さんは「簡単に言いますと、展示している建物や道具などについて、子どもから大人まで幅広い人たちに分かりやすく伝えるのが、私の仕事です。
中学生たちの職場体験も担当しますし、学校単位で見学に来る小学生たちに、昔の暮らしを伝える仕事もしています。囲炉裏や火鉢など、今では消えてしまった家の中の設備を実際に使ってもらったり、目の不自由な学生たちも触って間取りなどを実感できる触察模型を作ったりしています」と説明してくれました。
江戸東京たてもの園のホームページを見ると、楽しみながら昔の建物や生活道具などについて学ぶことができる『えどまる広場』というコーナーがあります。小学生たちが興味を持って、昔の生活を実感できるようなワークシートも掲載しているので、ぜひ見てみてください。丸山さんは、こうしたホームページを充実させる仕事もしています。
江戸東京たてもの園について丸山さんは、「教科書の歴史は偉い人や有名な人の大きな歴史です。でも歴史はそれだけではありません。名前が残らないたくさんの人たちの歴史もあるのです。少し昔の市民の暮らしが分かる、今につながる生活の歴史を学べる場所が、この江戸東京たてもの園です。博物館の見学は授業とは違います。学校の勉強が苦手でも、博物館を好きになってもらいたい。子どもたちに楽しい場所だと思ってもらいたい。そういう思いで仕事をしています」とにこやかに話してくれました。