2023年8月号
東京都を支える仕事❷ 東京さくらトラム(都電荒川線)の運転手の仕事に迫る!
東京都にはさまざまな交通手段があります。みなさんは地下鉄やバスを利用することが多いかもしれません。その交通手段の一つに「東京さくらトラム」の愛称(2017年決定)がある路面電車の都電荒川線があります。自動車が走る道路上の線路もある路面電車。同じ鉄道でも、地下鉄とは違う運転の苦労があるようです。運転手の荒井皓介さんに、都電運転手のお仕事についてお話を聞きました。
道路上では周囲に気配り
「小学生のころから電車が大好きでした。いったん別の鉄道会社に就職したのですが、そちらでは鉄道事業ではなくバス事業部門で事務関係の仕事をしていました。どうせなら本当にやりたいことにチャレンジしたいと思い、都電運転手に応募しました」と荒井さんは話してくれました。
電車は毎日、早朝から深夜まで走っています。都電の場合、1車両につき乗務しているのは運転手一人だけ。約80人の運転手が、交代しながら電車を運転しています。早いときは、早朝5時に出勤。荒川車庫前から出発し、三ノ輪橋~早稲田間を往復して約2時間。2往復して4時間乗務した後、1時間休憩し、さらに1往復しているそうです。
他の鉄道との違いについては「都電の場合、電車よりバスに近い感覚ですね。地下鉄なら運転手は乗客と接することがほとんどありませんが、都電の場合はお客さんとの距離が非常に近い。車内の雰囲気造りのためにも、『ありがとうございました』などの声掛けが欠かせません」と言います。
そして地下鉄との大きな違いは、一般の自動車が走る道路上も運行しているということ。「やはり気を遣うのは、『安全第一』ということです」と荒井さんは話します。道路上では自動車だけでなく、自転車や歩行者も通行します。「前だけ見て運転していれば良いわけではありません。乗客のみなさんが安全に乗車しているのか、車内のバックミラーで注意しているほか、道路上では常に、飛び出しがないかなど、周りに気を配っています」。また、路面電車と地下鉄では運転免許の種類が違っていて、両方を運転することはできないそうです。
利用客は1日平均約4万6千人。平日の朝夕は、通勤の会社員や通学の学生が多く、休日になると、あらかわ遊園などに向かう家族連れが目立つと言います。「都電は車両が大きくないので、なるべくたくさんの人が乗れるよう、奥に誘導します。ベビーカーを押している家族などにも気を遣います。また、高齢の利用者も多く、そうしたお客さまの場合は、きちんと着席するまでワンテンポ待ってから出発するように心がけています」
乗客への「声掛け」を大切に
そんな荒井さんにとって、仕事中にやりがいを感じるのはどういう時か聞いてみました。すると、「お客さまから『ありがとう』と感謝の言葉をいただいたときは、本当に良かったと思います。また、沿線で子供たちが手を振ってくれるのもうれしいですね」と笑顔で話してくれました。
「都電の場合、運行ダイヤは決まっていても、交通信号に左右されたり、お客さんの人数によっても乗降に時間がかかったり。ダイヤ通りの運行は難しいのですが、急いでいるときも接客が雑になってはいけませんし、安全がおろそかになってもいけません。これからも安全第一を心がけて毎日運転に励んでいきたいと思っています」と気を引き締めていました。
レトロな電車と出会える!都電おもいで広場
都電荒川線「荒川車庫前」停留場のすぐ近くには、「都電おもいで広場」という場所があり、懐かしい停留場をイメージしたスペースに、貴重な都電の旧型車両2両を展示しています。展示されているのは、昭和29年(1954年)製造の「5500型」と、昭和37年(1962年)製造の旧7500型。車両の中には、電車の運転台の様子を実際に体験できる「模擬運転台」や「模擬装置操作台」のほか、都電荒川線沿線をイメージしたジオラマ、懐かしくて貴重な歴史的資料の展示ケースなどが設置されています。
開場は、土、日、祝日の午前10時から午後4時まで(振替休日含む)で、入場無料です。みなさんもぜひ訪ねてみてくださいね。
❖ 夏休みイベント情報 ❖
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「都営まるごときっぷ(都営交通共通一日乗車券)」を購入した方に都営交通の車両と恐竜の大きさを実寸大で比較した限定コラボカードをプレゼントするキャンペーン。
7月29日(土)から8月31日(木)まで、東京さくらトラム(都電荒川線)にて、特別電車「都電納涼号」を運行します。
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取材協力:東京都交通局