2024年2月号
進化する都立公園
みなさんの家の近くには公園はありますか? 樹木などの緑が植えられたり、子どもが遊べる広場になっていたりする公園があると、とても気持ちがよいですよね。日本で都市部に公園が整備され始めたのは、明治6年(1873年)のこと。このときに東京都内にも、上野公園など五つの公園ができました。それから150年。公園は、子どもたちの遊び場として、地域の人たちの安らぎの場として、そして都会に自然豊かな環境を作ってくれる場として、暮らしに欠かせない存在となっています。
令和5年(2023年)10月には、国立競技場の近くの都立明治公園に新たなエリアがオープンしました。また、東京湾のごみの埋め立て地に木を植えて新たに森を作る計画が進んでいて、「海の森公園」として令和7年(2025年)3月に開園する予定です。
「都立明治公園」の100年後に完成する森
「都立公園」とは東京都が管理している公園のことです。災害が起こったときに避難場所になったり、なかには文化的に価値のある庭園として大切に守られた公園もあり、都民にとって重要な役割を持っています。
「都立明治公園」では、令和5(2023)年10月に新たなエリアをオープンしました。ここは、これまでの都立公園と異なり、民間企業が中心となって整備し、管理もしていく、都立公園初のエリアとなります。公園整備やイベント開催など、それぞれ得意な分野がある会社が集まり、その専門性をいかして公園をつくり、運営していきます。
公園内の「インクルーシブ広場」には、普通の公園にあるブランコやすべり台などではなく、自然を体全体で感じられるような遊具があります。障害のある人も、国籍が違う人も、みんなが“インクルーシブに(一緒になって)”交流できるようなイベントなども計画されているそうです。 また、この公園のシンボル的な「希望の広場」は、美しい天然の芝生でおおわれ、子どもからお年寄りまで、みんなが思い思いの時間を過ごすことができます。
「誇りの杜」は古くからの武蔵野地域(多摩地域東部)にたくさんあった雑木林のイメージで作られた森です。ここでは秋に葉が散る落葉樹約500本、常緑樹150本が植えられ、季節によって表情を変える落葉樹が中心になっています。それもヤマザクラやコブシなど、元々この地域にあった種類の木(在来種)が植えられています。また、この森は現時点では「未完成」。必要最低限の手入れ以外はせず、地域とともに時間をかけて森を育て、森が自分の力で進化する「100年の森」をつくっていきます。
明治公園のある場所の近くには昔、渋谷川という川が流れていました。今では上が道路などになって、地上からは見えなくなっています。明治公園にはそれを再現した「せせらぎ」もあります。普段は水がない『水の道』があり、雨が降ると雨水が流れ、池にたまって、自然に地下に水がしみこむようになっています。これは夏場の豪雨の時、雨水が一度に排水路に流れ込んであふれることを防ぐのに役立つそうです。
こうした森や水場は、もともとあった自然を再現していて、昔からいた動物、鳥や昆虫などがすみやすいようにも工夫されています。明治公園の近くには新宿御苑や明治神宮という大きな公園があります。そうした都心の緑をつなぐことで、さらにさまざまな動物や鳥、昆虫たちが行き来し、生態系が豊かになっていくことも期待されています。
周辺に住む人たちの理解や協力を得ながら、地域の人が中心となった「ボランティア・チーム」をつくり、変化していく森の整備や公園内のにぎわい作りを一緒にやっていくのも都立明治公園の新たな取り組みのひとつです。
ごみの島が豊かな「海の森」に生まれ変わる
新しい取り組みを取り入れた公園がほかにもあります。みなさんは、海に面した「海上公園」というのを知っていますか? 東京都の埋め立て地につくられた公園で、お台場海浜公園をはじめ40か所で開園しています。
令和7年(2025年)3月にオープンする予定の「海の森公園」は、東京湾に作られた海上公園。ここは、2021年に開かれた東京オリンピック・パラリンピックで、総合馬術やボート、カヌー競技の会場になった広大な島です。
実はこの場所、もともとごみでできた島。総重量1230万トンのごみと、新しい建物を建てるときに出る土などを、サンドイッチのように交互に埋め立て、高さ30メートルにもなりました。そこに厚さ1.5メートルの土や肥料などを表面にかぶせて苗木を植え、8年をかけて約24万本もの樹木が茂る美しい森へと生まれ変わりました。樹木を育てるために使われた肥料は、都内の街路樹を切ったときに出た枝や葉っぱを使って作られました。
海の森公園の森づくりは、苗木づくりから植樹まで都民が参加して行われました。鳥や昆虫のエサとなるような樹木もたくさん植えられており、すでにアオスジアゲハ、ギンヤンマ、トノサマバッタなどの昆虫や、アオアシシギ、トビなどの鳥の生息が確認されています。
今年3月には、この海の森公園の自然を守り育てるためのお手伝いをしてくれる「海の森子供レンジャー」の活動がスタートします。自然豊かな海の森公園の森づくりのほか、自然の観察や生き物図鑑づくりなど、楽しみながら自然環境について学びを深めてもらうプロジェクトです。
進化する都立公園
明治公園や海の森公園のように、近年の公園はたくさんの人の力を借りながら進化しています。地域の人のやすらぎの空間となるだけでなく、生き物のすみかになったり、災害の時の役にたったり、その働きもさまざまです。
現在都立公園は84か所、都立海上公園は40か所ありますが、都内にはこのほか、区市町村立の公園や児童遊園など、合計すると約1万2000か所の公園が存在しています。都会のイメージが強い東京都ですが、都市公園面積の割合は全国都道府県の中で1位です。 春になったらぜひ公園めぐりをして、あなたにとって特別な、お気に入りの公園を見つけてみてくださいね。
取材協力=東京都建設局・Tokyo Legacy Parks株式会社、東京都港湾局