2024年2月号
街を見守る東京都の街路樹
街を歩いていると、道路にたくさんの街路樹が植えられていることに気が付きます。鮮やかな花や緑の葉、秋の紅葉などを見ると、気持ちが晴ればれとしてきます。 実は街路樹には、大切な働きがあります。夏には強い日差しをさえぎって涼しい木陰をつくってくれたり、排気ガスや騒音をやわらげてくれたりするはたらきもあります。いきいきとした緑は、私たちに安らぎを与えてくれるだけでなく、多くの鳥や虫たちにとって、絶好の休憩所になっていて、都心にうるおいを与えています。
街路樹に役割があるの?
東京都内には、令和5年(2023年)4月1日現在で、計100万546本の街路樹が植えられていて、東京都はこのうち都道にある約65万本を管理しています。東京都は、平成20年から都内の街路樹を10年間で100万本に倍増する目標を立て、積極的に街路樹を増やしました。歩道沿いにある植樹帯、車道の間にある中央分離帯など街路樹の形はさまざまです。
では、街路樹にはどんな役割があるのでしょうか。
① 夏は日差しをさえぎり、冬は日の光を届ける
街路樹の葉は夏の強い日差しをさえぎり、落葉樹は冬に葉が散るので暖かい日の光を届けます。 また、ビルが密集してコンクリートとアスファルトでおおわれた都市部では、夏の時期にまわりの気温よりさらに暑くなる「ヒートアイランド現象」が起きますが、街路樹などの樹木は、そうした暑さをやわらげるはたらきもしています。
② 街の安全を守る
自動車の運転手の人たちの視線を導いたり、街の目印になったりして、安全でスムーズな交通を守るのに役立っています。また、火災が起きた時には水分を含んだ樹木が炎の熱を防ぎ、街が燃え広がるのを防いだり、人々が安全に避難したりするのに役立ちます。
③ 街にうるおいを与える
美しい花をつけたり、秋には鮮やかに紅葉したり、街を美しくいろどって季節の移り変わりを知らせてくれます。ビルだけしかないと、街は冷たく感じられますが、街路樹などの緑は、人々の目にやさしく、心にうるおいを与えてくれます。また、道路を通る自動車の排気ガスや騒音をやわらげ、道路沿いの環境を守っています。
④ 都市に生物が住みやすい環境をもたらす
いきいきとした緑は、多くの鳥や虫を呼び、都市にうるおいをもたらしてくれます。東京都内には広い公園もたくさんありますが、街路樹はそうした公園や緑地をつなぐ「緑の通り道」の役割も果たしています。都内の緑がつながることで、都会に生き物が住みやすい環境を作ることができます。それは人々の心に落ち着きと安らぎを与えてくれます。
東京都の街路樹ベスト5
実はこうした大切な働きを担っている街路樹。みなさんの住む街では、どんな街路樹を見かけますか? 都内道路の街路樹ベスト5はこちら。
第1位 ハナミズキ
「ハナミズキ」は、北アメリカ、メキシコ原産の落葉樹で、大正時代に、日本がアメリカにサクラを贈ったお礼として、アメリカから贈られました。4月下旬から5月上旬にかけて花が咲きますが、花びらのように見えるのは、実は葉が変形したもので、その中心の黄色い部分が本当の花です。
第2位 イチョウ
「イチョウ」は東京都が定めた「都の木」です。もともとは中国が原産で、高さ約30メートルにもなる落葉樹です。2億年以上前に地球に現れたといわれ、「生きた化石」とも呼ばれています。秋になると葉が黄色くなり、とてもきれいですね。東京都のシンボルマークは、イチョウの葉によく似ていますが、実は「東京都の頭文字Tをデザインしたもの」だそう。一方で、東京大学のマークはイチョウの葉をデザインしたものです。
第3位 サクラ類
「サクラ類」は、日本のシンボル的な木になっていますね。さまざまな品種があり、その数は数百種類もあると言われています。街路樹としては、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、サトザクラなどが植えられています。このうちソメイヨシノは東京都が定めた「都の花」になっています。
第4位 トウカエデ
「トウカエデ」はカエデの仲間で、一般的なカエデが葉の先が五つに分かれているのに対し、葉の先が三つに分かれています。乾燥や病害虫に強いことから、街路樹としてよく植えられています。
第5位 ケヤキ
「ケヤキ」は、日本の代表的な広葉樹の一つです。枝がほうきのように広がり、美しい形であることから、街路樹のほか、公園や家庭でも植えられていることが多いようです。
街路樹をもっともよい状態に保つために
街路樹は、放置していると、枝が伸びて道路標識が見えなくなってしまうこともあります。信号や標識が見えなくなると、自動車の運転手が運転を間違えてしまうかもしれません。それはとても危険なことですね。
また、病気や害虫などのために樹木が弱ると、風などで折れて倒れてしまうことも考えられます。アスファルトの下で育った街路樹の根が道路をでこぼこにすると、歩行者が転んだり、車椅子が通りにくくなってしまったりします。こうしたことが起こらないように、街路樹は大切に手入れをされています。
東京都はそれぞれの街路樹を、立地や役割によって管理目標を定めています。たとえば大きく育てるのか、今の大きさのまま保つのか、樹木の形を種類によって切り分けて定期的に手入れ(剪定)をし、病害虫を防ぎ、樹木の健康状態を診断しています。
みなさんも街路樹を見たら、それが街の中でどんな役割をしているのか、季節の移り変わりを感じながら考えてみてください。
取材協力:東京都建設局