2024年4月号
2050年、学校はどう変わる? 未来の授業を想像してみよう
みなさんは、未来の学校がどんなふうになるのか、考えたことはありますか?
未来の学校はどんな形になり、授業は今とどんなふうに変わるのでしょうか。2006年にできたアメリカのスタンフォード大学・オンラインハイスクールは、世界中の生徒にオンラインで授業を行うという先進的な学校です。校長の星友啓先生は「オンライン学校の運営を通して、さらに未来の学校についても考えるようになった」とのこと。みなさんが大人になるころ、未来の授業はどうなっているのでしょうか。4月27日から1か月間開催される、東京の未来を体感するイベント「SusHi Tech Tokyo 2024(スシテック東京 2024) ショーケースプログラム」の特別企画「2050年学校アイデア会議」を監修する星先生に、「未来の学校と授業」について話を聞きました。
スタンフォード大学・オンラインハイスクール 校長
星友啓先生
スタンフォード大学は、アメリカのカリフォルニア州にあり、これまでに84人ものノーベル賞受賞者を出すなど、イギリスのオックスフォード大学、アメリカのハーバード大学などと並んで世界トップクラスの大学です。
スタンフォード大学で講師をしていた星先生は、さまざまな「得意」を持つ子どもたちの学びの機会を広げるため、2006年にオンラインハイスクールを立ち上げました。その学校は今では中学1年から高校3年まで約1000人、世界46か国から生徒が集まる、アメリカでもトップクラスの進学校です。数学、歴史などの普通の教科のほか、起業家にサポートしてもらいながらビジネスアイデアを考える講座、サステナブルについて議論する講座など、ユニークな授業がたくさんあります。
👉スタンフォード大学・オンラインハイスクール(英語サイト)
未来の授業は今とどう変わる?
―星先生は、「2050年」を基準に未来の学校について考えていらっしゃいますが、それはなぜですか?
今の子どもたちは2050年には立派な大人になっています。もしかしたらその頃、自分の子どもが学校に通っていて、「こんな授業を受けている」「今とこんなに違う」と感じられると、イメージしやすいのではと考えたからです。
そして2050年には、いまはまだない職業が誕生するでしょう。今から20年前にはYouTubeもなく、もちろんなりたい職業ランキングにYouTuberも入っていませんでした。こうして時代に必要な新しい職業が増えていくことを考え、子どもたちにどんな教育をして、どんなスキルを身につけてもらえばいいのか、という視点で「2050年」について考えています。
― 未来の授業はどう変わりますか。
日本では少子高齢化が進んでいますが、世界の人口は今だいたい80億人。それが2050年には100億人になるという予測もあります。教育を受ける子どもたちに対応するには、学校をたくさん建てるだけでは間に合いません。だから今後、オンラインをはじめ、さまざまな取り組みを取り入れた授業が増えていくだろうと考えています。
学校に来られる子だけが教室に集まり、事情がある子は自宅や移動先からリモートで授業に参加することも普通になるかもしれません。 また、ゲームなどでは、VR(バーチャル・リアリティ)の進化によって、「仮想現実」というあたかも目の前にあるかのように見せる技術がどんどん発達していますが、そうした新しい技術が、授業でもどんどん取り入れられていくでしょう。
たとえば、社会科見学は、実際に見に行けないようなところ…たとえばVRで宇宙に飛び出してみたり、あるいは人間の体の中に入りこんでみたり。さらに、修学旅行でも実際にいろんな土地を訪れるだけでなく、世界中を見て回ることも、VRでは可能になります。
今後変わること、変わらないこと
― 星先生のオンライン高校のように、すべてがインターネットを通じた授業になる可能性はありますか。逆に「今と変わらないだろうな」と思うことを教えてください。
すべてがオンライン授業の学校になるとは考えていません。すべてをネットワーク上で…というわけではなく、子どもたちの心の成長には顔を合わせる「対面」が大切なのは、これまでもこれからも変わりません。大切なのは、学校がそれぞれの教育方針やねらいを明確にすることです。
日本はだれもがどこでも一定の質の高い教育を受けられることで、世界のトップクラスですが、将来は学校ごとの個性が注目されるようになってくると思います。
― 授業への参加のしかたは変わりますか。
学校が「先生に教わる」という以外に、先生と子どもたちで一緒に何かを生み出したり、子どもたちが“それぞれの得意”を活かして、たとえばビジネスアイデアなどを自ら発信する舞台になっていく可能性があります。
また、ロボットも導入されるようになるでしょう。体に障害がある人などが遠隔操作できる「OriHime(オリヒメ)」という分身ロボットを使って、社会参加する試みが始まっています。病気やけがで長期入院している子どもがそうした遠隔操作ロボットで授業に参加することが増えるかもしれません。何かの事情で学校に行きにくい子も、そうしたロボットでなら授業に参加できるかもしれません。
わたしのオンライン高校では、オンライン授業を受けている子はさまざまです。スポーツ選手として世界中あちこちの大会に参加したり、俳優の仕事で学校を休みがちな子ども、ヨットで世界一周していて学校に通うのが困難な子どももいたりして、まさに国境や人種、得意分野を超えた「多様性」の学校。それぞれの特性に合わせて、中学レベルから大学レベルまでさまざまな授業から自由に選んで、学びたいことをどんどん学ぶことができるようになっています。
―未来をつくっていく子どもたちにメッセージをお願いします。
2050年には、生徒たちの「自分らしさ」を今よりもっと発揮しやすくなったり、自分に向いていると思う学習を、希望に合わせて選ぶことができたりするようになると考えています。このように将来は学び方も変わっていきますし、みなさんが大人になるころには時代の変化に合わせた職業も増えて、仕事の選択肢も増えているでしょう。
みなさんには、自分の得意なことや好きなことを大切にしながら学びや興味を深め、そのまわりに広がる世界がどう変わっていくかよく観察して、自分らしく進める道を見つけていってほしいと思います。
東京の未来を体感できる「SusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラム」では、学校の未来を考える「2050年学校アイデア会議」を開催します。未来の学校や授業をどうしたいか、ぜひ会場にお越しいただき、みなさんの意見を聞かせてください。
未来の「学校アイデア」を一緒に考えよう
さぁ、みなさんのまわりには、どんな未来が待っているでしょうか? それをつくっていく主人公はこれから大人になっていくあなた自身です。
未来の暮らしはどのようになるのか、4月から5月にかけて東京ベイエリアで開催される「SusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラム」(開催4月27日~5月26日)では、2050年の東京を感じられるさまざまな展示やイベントが行われます。
日本科学未来館では、未来の乗り物や食べ物、ロボットなどの展示が予定されています。 この中で特別企画として星先生が監修する「2050年学校アイデア会議」も行われます。ゲストと会場参加者が一緒になって未来の学校を考える企画です。未来の学校や授業がどうなるのか、みなさんも参加して、一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
👉SusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラム
SusHi Tech Tokyo 2024とは、「持続可能な新しい価値」を生み出す「Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo」を推進する取り組みの一つで、世界共通の都市課題解決に向けた東京発のイノベーションを創出するとともに、未来の都市モデルを発信する国際イベント。シティ・リーダーズプログラム、グローバルスタートアッププログラム、ショーケースプログラムの3つのプログラムを開催します。
「『自然』と『便利』が融合する持続可能な都市」を目指すSusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラムでは、有明アリーナ、日本科学未来館、シンボルプロムナード公園、海の森エリアの4会場を舞台に、未来の東京を体験する子ども向けのプログラムがもりだくさんです。
ぜひ会場に足を運んで、一足早く未来を体験してみませんか。
取材協力=東京都政策企画局計画調整部