2024年4月号
食品ロスを減らすために、わたしたちにできること
みなさんのまわりでは、スーパーやコンビニなどに食品がたくさん並び、街にはレストランや飲食店がありますね。だからふだんは食べる物に困っていないように見えます。ところが世界にはとても貧しい国や戦争が起きている地域などがあります。国連の報告によると約79億人の世界の人口のうち7億7000万人以上が食べ物を十分に食べられていないそうです。つまり、世界の約10人に1人は、空腹や栄養不足に苦しんでいることになります。
その一方で、日本ではまだ食べられるのに捨てられている食品や食材がたくさんあります。これを「食品ロス」といいます。この食品ロスをなくしていくことが、今の日本だけでなく、未来の世界にとってとても大切なことです。
食品ロスが引き起こす問題
そもそも、食品ロスとは具体的にどのようなものでしょうか。 食品ロスとは、まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまう食べ物のことを言います。ただし、食べられない部分(魚の骨など)は食品ロスに含まれません。同じように野菜やフルーツでも、食べられない部分(種や皮など)は家庭で捨てても食品ロスにはなりません。
▶生産の場で
例えば野菜などを作っている農家では、小さすぎたり、形が悪かったり、キズがついたりすると、店に並べることができない「規格外」となり、捨てられてしまうことがあります。
▶製造の場で
肉や、魚、野菜など食品を加工する製造の場でも食品ロスは発生します。工場で作りすぎたり、パッケージの印字ミスや型崩れした商品などは、販売できず捨てられることがあります。
▶配送の場で
工場からスーパーなどへ送られるときに、パッケージに傷がつくことで捨てられることがあります。
▶販売の場で
スーパーなどで売れ残ってしまったり、レストランなどの飲食店でお客さんの食べ残しがあったりすると捨てられることがあります。
▶消費の場で
家庭でも、食品の買いすぎや使い忘れ、料理の作りすぎた食べ残しで捨てられることがあります。
東京都の食品ロス
食品ロスは、家庭での食べ残しなどの「家庭系」と、レストランや商店、工場などで捨てられる「事業系」に大きく分けられます。東京都内では1年間に捨てられる食品ロスの量は36.8万トン(2021年度)。
東京の場合、全国と比べると、レストランなどの外食産業での割合が大きくなっています。国民一人当たりの食品ロスは、毎日おにぎり1個分(114g)と言われており、東京都では2050年に食品ロスを実質ゼロにする目標を掲げています。
消費者庁によると、日本で1年間に捨てられる食品ロスの量は523万トン(2021年度)。途上国などに援助されている食料支援の量(1年に440万トン)の約1.2倍分もの食品が、日本国内だけで捨てられています。
今、世界では全人口の約10人に1人、合計7.7億人もの人が食べるものに困っています。世界で食料が必要な人がたくさんいるのに、まだ食べられる食品を捨てるのは大変もったいないことですね。未来はさらに大変です。国連によると、世界の人口は2050年には今よりも20億人も多い約97億人になるとみられており、このまま食品ロスを出し続けていると、空腹や栄養不足で苦しむ人がさらに増えることになってしまいます。
それだけではありません。捨てられた食品はゴミとして処理されるため、たくさんの費用がかかります。日本では、捨てられた食品は「可燃ゴミ」として燃やされます。そのため、地球温暖化の原因となる温室効果ガス(CO2)をたくさん出すことにもつながっています。
食品ロスを減らす技術「フードテック」って?
こうした問題を引き起こす食品ロスは、どのようにしたら減らしていけるのでしょうか。解決のための方法の一つとして「フードテック」があります。「フードテック」とは「フード(食品)」と「テクノロジー(技術)」をかけ合わせた言葉。東京都はこうした新しい技術を利用して、食糧不足や食品ロスなど、食の領域における様々な社会課題の解決につなげていくプロジェクトを支援してきました。
▶アップサイクル技術
廃棄間近の食材や食料を活用し、付加価値をつけて新たな商品とする技術
▶フードシェアリングサービス
何もしなければ廃棄されてしまう商品を消費者のニーズとマッチングさせることで食品ロスの発生や、無駄を減らす仕組み
▶食品のロングライフ化技術
鮮度を保持し、保存期間を延ばすことで食品ロスを削減できる包装技術や冷凍技術等
▶ICT・AIを活用した先進技術
在庫過剰による食品ロスを削減するため、気象データや時間毎の販売実績、来客数等を活用することで高精度な需要予測を行う技術等
👉お知らせ
SusHi Tech Tokyo 2024(スシテック東京 2024) ショーケースプログラム
4月27日から開催されるSusHi Tech Tokyo 2024 ショーケースプログラムでは、陸上でのサーモンの養殖技術など「未来の食」に関する最新のフードテックについて知ることができます。興味を持ったらぜひ遊びに行ってみてください。
<主なコンテンツ>
・おいしくて地球にも優しいZ品グルメガーデン(シンボルプロムナード公園)
・肉や魚介類の代替食材を映像で紹介する「おばけレストラン」(日本科学未来館)
・持続可能な食の体験エリア(海の森エリア)
食品ロスを減らすためにできること
「食の問題」に立ち向かうために、こうしたフードテックは欠かせないものになって行くでしょう。ただ、こうした技術だけでなく、一人ひとりができることを考えていかなくてはなりません。わたしたちは食品ロスを減らすために、どんなことができるでしょうか。
▶買い物でできること
❶消費期限と賞味期限の違いを正しく理解する
食品には、「消費期限」と「賞味期限」という表示があることを知っていますか? 似たような言葉に見えますが、実は全く違います。 「消費期限」は、その日付を過ぎたら、食べない方がよいという期限です。弁当やサンドイッチなど、傷みやすい食品につけられています。そして「賞味期限」とは、“おいしく食べられる目安”としてつけられている期限です。賞味期限を過ぎたからといってすぐに捨てるのではなく、食べられるか確認してみましょう。
❷「てまえどり」をしよう
スーパーやコンビニなどで買い物をするとき、すぐに使う食品を買う場合は商品棚の手前から取る「てまえどり」をしましょう。手前にある商品は奥の商品よりも消費期限や賞味期限が短い場合が多いため、期限切れや売れ残りで捨てられる量を減らすことにつながります。
❸ 「フードシェアリングサービス」を活用しよう
先ほど紹介したフードシェアリングサービスを活用することで、店側は売れ残りを減らすことができます。それだけでなく、消費者もいつもより安くお得に買えます。
▶買い物のほかにできること
❶家でできること
買い物のほかに、家や外食先でできることもあります。 冷蔵庫の中を整理して、使い忘れて傷んでしまうことを防いだり、必要のないものを買わないようにしたりできます。
❷レストランでも家でも「食べきれる分だけ」
レストランや食堂などに行ったときは、食べられる分だけ注文し、食べ残しをしないようにしましょう。どうしても食べきれなかったときは、お店の人に、持ち帰りができるかどうか、聞いてみるのもおすすめです。
また、家で料理するときは、食べ残しを出さないよう、食べきれる分だけをつくることが大切です。
必要な分だけ必要なときに買う。食材は余らないように使い切る。料理を作り過ぎない。そして作った料理はなるべく食べきる。食べきれなかった分は工夫して次に食べる。こうした一人ひとりの行動の積み重ねが、食品ロスを減らすことにつながります。
みなさんも、自分にできることから少しずつ行動に移していけるとよいですね。
取材協力=東京都環境局
出典=「東京 食品ロスゼロアクション」
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明るい未来の東京を切り拓くための、「都政の羅針盤」である『未来の東京』戦略の最新版、「version up 2024」では、食品ロスを削減する取り組みが記載されているので、こちらも確認してみよう。