2024年5月号
東京都を支える仕事❺ 街を守るごみ処理の仕事
わたしたちは暮らしの中でさまざまな「ごみ」を出しています。料理のときに出る野菜くずや、食事の食べ残し、箱や袋などのパッケージ、読み終わった新聞や雑誌、使い終わった電池、こわれてしまった電化製品…“ごみを出さない”というのはほぼ不可能です。みなさんの家庭では、「燃やすごみ(可燃ごみ)」や「燃やさないないごみ(不燃ごみ)」、「粗大ごみ」、そしてリサイクルされる紙やペットボトルなどの「資源ごみ」などに分別して、地域のごみ収集場に出したり、処理場に持っていったりしていると思います。ごみ収集場に出されたごみは、清掃車によって集められていきます。
では、リサイクルされる資源ごみ以外のごみは、その後どこに行くのでしょうか。そしてもし、清掃の仕事がなかったら、わたしたちの街はどうなるのでしょうか。一緒にごみについて考えてみましょう。
ごみが家庭や学校で捨てられたあと
東京都内の家庭や学校、お店、会社などで出る1年間のごみの量は約424万トンもあります(令和2年度)。どんな量なのか想像もつきませんね。環境省の調べによると、日本人は1日1人当たり880g(おにぎり約8個分)のごみを捨てているそうです。4人家族なら、1日約3.6kgもの量を出している計算になります。
「燃やすごみ(可燃ごみ)」や「燃やさないごみ(不燃ごみ)」、「粗大ごみ」、そしてリサイクルされる紙やペットボトルなどの「資源ごみ」などに分別されたあと、それぞれ適切に処理されます。
▷可燃ごみ
家庭で分別されたごみのうち燃やすごみは清掃工場に運ばれて焼却されます。江東区夢の島にある「新江東清掃工場」は、1日に1800トン(ごみ収集車約900台分)ものごみを燃やして処理する「焼却」ができる日本でも最大規模の清掃工場です。
清掃車が可燃ごみを運び込む「プラットホーム」では、ごみのにおいが外にもれないよう、扉の中に向かって空気が流れる仕組みになっています。
焼却の時に発生する「排ガス」は適切に処理され、きれいになった状態で150メートルもある塔のような煙突から出ていきます。焼却されてあとに残る灰は、元の大きさの約20分の1の大きさになります。一部はセメントなどとして活用されますが、それ以外は最終処分場である埋め立て地に運ばれて埋め立てに使われます。
きちんと分別しないと…
可燃ごみの中に、粗大ごみや金属類などが混ざっていると、焼却炉の故障の原因になります。新江東清掃工場では、料理で使うアルミはくなどのアルミニウムが燃えずに残り、焼却炉の下にたまって故障の原因になっています。
焼却炉が故障してしまうと、直すのにたくさんの時間と費用がかかります。故障がなかなか直らないと、ごみを燃やせないことから、収集作業が遅れる可能性もあります。そうなると、わたしたちの生活にも影響が出るかもしれません。このように、ごみ分別のルールにはさまざまな理由があるのです。
▷不燃ごみ
家庭などから出る不燃ごみは、江東区海の森にある「中防不燃ごみ処理センター」と、大田区京浜島にある「京浜島不燃ごみ処理センター」の2か所で処理されています。
ここに集められた不燃ごみは回転式破砕機に入れられ、高速回転するハンマーで1辺の長さ15センチメートル以下に細かくくだかれます。このとき、爆発の危険がある可燃性のガスが入ったスプレー缶などが混ざっていないか、ベルトコンベアーの上から監視担当者が目視で確認します。細かくくだかれたごみからは、リサイクルできる鉄とアルミニウムが集められ、燃やせる破片は清掃工場に運んで燃やし、それ以外が埋め立て処分されます。
⚠危険!リチウムイオン電池の処分
最近では、モバイルバッテリーや充電式掃除機などに使われているリチウムイオン電池が不燃ごみや粗大ごみとして捨てられ、ごみ処理場などで火災を起こすトラブルが増え、問題になっています。捨てるときは、住んでいる自治体の回収ボックスなどに捨てるようにしましょう。
▷粗大ごみ
粗大ごみは、江東区海の森にある「粗大ごみ破砕処理施設」で処理されます。集められたごみはまず、木製家具などの燃えるものと、自転車などの燃えないものに分けられます。
これらはやはり、回転式破砕機で細かくくだかれます。そして燃えるものは焼却、燃えないものからは鉄が回収され、燃やせる破片は清掃工場に運んで燃やし、残りは埋め立て処理されます。
ごみが最後にたどり着く「最終処分場」
東京23区の家庭から出て清掃工場で適切に処理されたごみは、最終的には「中央防波堤埋立処分場」で埋め立てられています。ごみが最終的に行きつく場所なので「最終処分場」とも呼ばれています。
最終処分場の北側にある「中央防波堤内側埋立地」(写真青枠部分)はごみの埋め立てが終わり、緑豊かな公園として整備されていて、「海の森公園」として2025年3月にオープンする予定です。現在はそのとなりの中央防波堤外側埋立処分場と新海面処分場で埋立処分をしています。
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この処分場は、「外側」「新海面」合わせて約500ヘクタール(東京ドーム100個分)という広大な場所です。次々と大きなトラックがやってきては積んできたごみを降ろし、ブルドーザーで土をかぶせていきます。
可燃ごみとして燃やされた灰は「額縁方式」という方法で埋めます。風で舞い上がらないように湿らせた灰を、土で盛り上げた土手をつくってできた穴に落とし込みます。そして灰が一定の厚さになったら土をかぶせます。
細かくくだかれた不燃ごみは「サンドイッチ工法」といわれる方法で埋め立てられます。ごみを3メートルほど積み上げ、その上に50センチメートルの土をかぶせます。
サンドイッチ工法で埋め立てることにより、①ごみが風で散らばるのを防ぐ、②ごみの臭いを止める、③害虫の発生を防ぐ、④火災の発生を防ぐ という4つの効果があります。ごみはこれらの方法で30メートルの高さになるまで積み上げられていきます。
ごみの層を通る雨水をきれいにするシステム
また、埋立処分場に雨が降ると、雨水は地中に浸み込み、周囲に何か所も設けられた池(①集水池)にたまります。この水を浸出水と言いますが、ごみの層を通ってくるので汚れています。浸出水は、集水池から高さ30メートルの山の上にある大きな池(②調整池)を通って、③排水処理場へと送られます。排水処理場ではさまざまな方法で浸出水をきれいにし、さらに④砂町水再生センターでもう一度きれいにしてから東京湾に流しています。
この中央防波堤埋立処分場は、見学することもできます。公益財団法人東京都環境公社は、小学校などを対象に処分場見学などの環境学習を実施しています。
「循環型社会」って? 自分にできることを考えよう
東京都内にある埋立処分場は、今後50年以上の埋め立てが可能と予測されています。しかし、埋め立てできる量に限りがあることには変わりありません。この処分場を少しでも長く利用するためには、工場や各地域での取り組み以上に、わたしたち一人ひとりがごみを減らす努力をすることが大切なのです。
ごみを減らすためにわたしたちができることは
① ごみそのものを減らす
「リデュース(Reduce)」
② 使えるものはくり返し使う
「リユース(Reuse)」
③ 再び資源として利用する
「リサイクル(Recycle)」
の3つがあります。
この3つを、それぞれの英語の頭文字をとって「3R」といいます。この3Rを一人ひとりが心がけることで、ごみは減らすことができます。
このうち「リサイクル」は、古着を細かく切って高品質な繊維に再生させたり、使用済みの食用油を飛行機の燃料として再利用したり、企業努力によってさまざまな技術開発が増えてきています。
東京23区では、燃やすごみ全体の約35~40%が水分量という試算がされています。生ごみをなるべく出さない、食事はなるべく残さない(食品ロスの削減)、ごみの分別のルールを守る、ものをなるべく長く使うなど、小さなことから少しずつ心がけていきましょう。ほかにも、何かを買う前にレンタル品がないか探したり、ゲームや映画のソフトをダウンロード版で買ったりするなど、ごみを出さないように努力することも大切です。
さて、わたしたちの暮らしが、ごみ処理の仕事に守られていることがわかりましたか? もしこうした仕事がなかったら、わたしたちが毎日過ごす家や学校などがごみだらけになってしまい、日々の生活にも困ってしまいます。当たり前な日常は、“縁の下の力持ち”に支えられているのです。みなさんも友だちや家族の人と話し合って、自分たちに何ができるのか、考えてみましょう。
取材協力・写真提供=東京都環境局、東京二十三区清掃一部事務組合