2024年9月号
大地震はやってくる!
覚えておこう!「もしも」の備え
東京をふくむ関東地方に大きな被害をもたらした関東大震災が1923(大正12)年9月1日に起きてから、101年が経ちました。
東京は、これまでの長い歴史の中で、何度も大地震や火山噴火などの自然災害におそわれてきました。気候変動の影響で豪雨などの風水害の危険性は高まっていますし、首都直下地震、大規模な火山噴火など、いつ災害が起きてもおかしくありません。
もし今、大規模な地震が起きたら、どう行動するのがよいのでしょうか。そして、ふだんからどんな準備をしておけばよいのでしょうか。いっしょに考えていきましょう。
「首都直下地震」と「南海トラフ地震」に備えよう
日本が地震大国といわれるのは、周辺に複数のプレート(岩盤)が存在し、それらが「ずれ」を起こすことで地震を招くからです。
関東大震災では、マグニチュード7.9と推定される大規模な地震が起こり、東京都内では多くの建物が倒れたり、火事になったりして、多くの人が被害にあいました。そして今、遠くない将来に大規模な地震が起こることが予想されています。それが「首都直下地震」と「南海トラフ地震」です。
💡解説 「海溝型地震」と「内陸の地震(直下型)」
▶海溝型地震
海のプレートが海溝で沈み込む時に陸地のプレートの端が巻き込まれます。やがて、巻き込まれた陸のプレートの端は元に戻ろうとして跳ね上がり、巨大な地震と津波を引き起こします。この跳ね上がりによって起こる地震を海溝型地震といいます。南海トラフ地震はこの海溝型地震にあたります。
▶内陸の地震(直下型)
海のプレートの動きは、海溝型地震の原因となるだけでなく、陸のプレートにも強い力がかかるので、内陸部の岩盤にひずみが生じます。ひずみが大きくなると、内陸部の地中にあるプレート内部の弱い部分で破壊が起こります。こうして起こる地震は、海溝型の巨大地震に比べると規模は小さいのですが、一部の地域で激しい地震を起こします。首都直下地震は、この内陸の地震にあたります。
👉首都直下地震
「首都直下地震」(都心南部直下地震)は、都内で最大規模の被害とされているマグニチュード7クラスの地震です。震度6強以上の想定が、こちらの地図のように広い範囲におよぶとされています。政府は、南関東地域におけるマグニチュード7クラスの首都直下地震が起こる確率について「30年以内に70%程度」(2024年時点)と発表しています。
もしこの地震が起こると、東京都では、死者6148人、負傷者9万3435人という大きな被害が想定されています。
震度6強以上の強い地震が広い範囲で起こり、地震のゆれによって建物が倒れたり、火事が起きたりします。電車は止まり、道路にも割れたガラスやブロック塀が倒れてくるでしょう。このため、家に帰るのが難しい「帰宅困難者」は約453万人、自宅から避難しなくてはいけない人は約299万人にもなると予想されています。
👉南海トラフ地震
「南海トラフ地震」は、東海から九州におよぶプレートのさかい目にあたる南海トラフを震源として、おおむね100年~150年おきに繰り返し起きてきた巨大地震です。
2024(令和6)年8月8日に宮崎県の日向灘を震源とする地震があり、宮崎県日南市で最大震度6弱を観測しました。気象庁は南海トラフ地震の発生する可能性がいつもと比べて高くなっているとして、臨時情報(巨大地震注意)をはじめて発表しました。
特別な注意の呼びかけをする期間は1週間後の15日に終了しましたが、大規模な地震発生の可能性がなくなったわけではないので、引き続き日頃から地震の備えをしておくようにしましょう。
南海トラフ地震が起きた場合、東京都内の被害は、最大で死者953人、建物被害1258棟と想定されています。そして、震源地が海底であるため、津波も予想されています。特に伊豆諸島や小笠原諸島では大きな津波が起こり、式根島では一番高い津波が約28mもの高さになると言われています。
大地震が起きた時に1人でいたら、どう行動する?
こうした地震が起きた直後は、どうしたらよいのでしょうか。
おうちの人が近くにいる場合は、いっしょに行動しましょう。学校にいる時は、学校の先生の指示に従ってください。もし、あなたが一人でいたら地震発生の瞬間は、突然のゆれにおどろき、適切な判断が難しくなります。日頃からとるべき行動を想像しておくことが大切です。どのようにして自分の身を守るか確認しておきましょう。
💡通学路の危険な場所を確認!
気をつけなくてはいけないのは、学校や自宅から離れたところに一人でいる場合です。下校の途中では、どうしたらよいか、日頃からおうちの人と話し合っておきましょう。また、家の周りや自分がよく行く場所で地震が起こったらどのような危険があるか確認しておきましょう。
💡エレベーターに乗っていたら
エレベーター内でゆれを感じたら、すべての階の行先ボタンを押し、止まった階で降ります。もし閉じこめられてしまったら、インターホンで外部に連絡をしてください。
高層ビルは長くゆれ、上の階ほど大きくゆれます。ビルの中にいる場合は、エレベーターホールなどで姿勢を低くし、ゆれが収まるのを待ちます。ゆれが収まって避難するときは、余震や停電でエレベーターが停止するおそれがあるので、階段を使いましょう。
💡デパートやスーパーマーケットにいたら
デパートやスーパーマーケットでは、ガラスのケースが壊れたり、並んだ商品が落ちてきたりすることに注意しましょう。スーパーでは、買い物かごをかぶって身を守るのもよいでしょう。
映画館や劇場では、非常口に向かって走るのは危険です。館内放送や係員の人の話をよく聞いて、その指示に従ってください。
💡電車やバスに乗っていたら
上から落ちてくるものなどから身を守り、ホームから転落しないように、近くの柱のそばに行ってください。みんなが外に出ようと走ったり、線路に下りると危険です。あわてずにゆれがおさまってから、駅員の指示に従いましょう。
電車やバスなどは、強いゆれがあると緊急停車します。立っている人はつり革や手すりなどにつかまるか、姿勢を低くし、かばんなどで頭を守ってください。ゆれがおさまったら乗務員の指示に従いましょう。
身を守れたら、大切な人と連絡を取ろう!
自分の安全を確保することができた後は、家族など大切な人に、自分が無事であることを伝えましょう。携帯電話を持っている場合は、連絡に電話を使うことが多いかもしれません。でも、災害が起きた時には、警察や消防などの連絡が優先されるため、携帯電話はつながりにくくなることがあります。そんな時は、ほかの連絡手段を覚えておき、大切な人と連絡を取りましょう。
💡災害時につながりやすい!公衆電話
公衆電話は、災害の時につながりやすいと言われています。
公衆電話を使うためには、10円玉か100円玉、もしくはテレホンカードが必要です。外出する時に持ち歩くものなどに用意しておくとよいでしょう。ただし、大規模な災害の時には、無料で使えることもあります。
必要なときに連絡をとるため、おうちの人の電話番号を覚えておくか、いつも持ち歩くものに電話番号をメモして入れておくと安心です。通学路やいつも通る道などで、どこに公衆電話があるのかおうちの人と調べて、使い方を確認しておきましょう。
💡声で安否を確認!災害用伝言ダイヤル「171」
電話で伝言を録音して残すことができる「災害用伝言ダイヤル」というものがあります。 電話がつながらない場合は、利用してみましょう。
自分の安否を伝える場合
❶ 「171」に電話をかけます
❷ つながったら、ガイダンスに従って、録音する「1」を押します
❸ ガイダンスに従って、自宅やおうちの人の電話番号を市外局番から入れます
❹プッシュ式電話機の場合には「1」を押してガイダンスに従います
❺そうすると自分がどこにいるのかなどについて伝言を残すことができます
おうちの人からの伝言を聞く場合
❶ 「171」に電話をかけます
❷ つながったら、ガイダンスに従って「2」を押します
❸ ガイダンスに従って、メッセージを聞きたい人の市外局番から電話番号を入れます
❹ 伝言が届いていれば、メッセージを聞くことができます
災害用伝言ダイヤルは、毎月1日と15日には体験利用をすることができます。おうちの人といっしょに練習しておくのもよいでしょう。
公衆電話と同じで、連絡を取るために電話番号を覚えておくか、いつも持ち歩くものに電話番号のメモを入れておくと、いざという時のお守りになりますよ。また、インターネットから安否確認ができる災害用伝言板「web171」や、携帯電話会社が提供する災害用伝言板サービスもありますので、合わせて覚えておきましょう。
※災害用伝言ダイヤルの録音時間は30秒以内で、1電話番号につき20件までメッセージを登録できます。20件を超えると、古いものから順に消えてしまうので、安否、居場所、待ち合わせ場所など、大切なことを録音して残すようにしましょう。おうちの人と30秒で何を伝えるか、メッセージを考えてみましょう。
💡そのほかに安否を確認する方法
ほかにも、離れた場所に住む家族や知っている人を通じて連絡を取る方法もあります。電話がつながりにくくても、SNSであれば連絡が取りやすい場合もあります。
「避難場所」を確認しておこう!
一人でいて、どこが安全かわからない時は、「避難場所」や「避難所」を探してください。
「避難場所」は、災害が起きた直後に地震火災や津波などの危険からいのちを守るために緊急避難する場所です。「避難所」は、災害が起きて自宅に住めなくなった場合に、しばらくの間生活をする場所で、学校や公民館などが指定されています。このマークを探したり、ふだんからチェックしておきましょう。
一人で通学路を歩いている時、電車に乗っている時に地震が起きたら、どの避難場所に行けばよいか、おうちの人と話し合っておきましょう。いざという時の連絡の取り方、そして待ち合わせ場所を決めておくことが大切です。
東京都の災害に強いまちづくりの取り組み
東京都の人口は約1400万人ですが、近くの県から働きにくる人が多いため、平日の日中は東京都に1675万人がいると言われています。東京都は、一人でも多くの人の安全・安心を守ることができる災害に強いまちを目指して、「TOKYO強靭化プロジェクト」を進めています。
💡電線・電柱の地下化
地震でまちの電柱が倒れると、歩行者が危険なうえに、救急車などの緊急車両がスムーズに通れなくなってしまいます。そのため、東京都は道路にはりめぐらされた電線などを地下にうめて電柱をなくす取り組みを進めています。
💡燃えない、燃え広がらないまちづくり
関東大震災では、木造の家屋が激しく燃え、東京は焼け野原になってしまいました。こうした教訓から、火が燃え広がるのをさえぎる役割を持った道路を整備したり、古い建物の建てかえを進めたりするための対策を行っています。
💡キッズモードも登場!「東京都防災アプリ」
「東京都防災アプリ」をを知っていますか?
このアプリにはキッズモードがあり、クイズなどで楽しみながら防災について学んだり、避難シミュレーションで避難場所までのルートを確認したりできるほか、災害が起きた時にも役立つ情報がもりだくさんです。「防災マップ」では避難場所を調べたり、水害リスクや火災危険度などを確認したりできます。さらに、事前にマップをダウンロードしておくことで、災害時に電波がなくても地図を確認することができます。
大切なのは、事前の備えと「心の準備」
今起きてもおかしくない、大地震。準備が早すぎるということはありません。いざという時、一人でいても落ち着いて行動ができるように、おうちの人と話し合っておきましょう。また、地震が起きた時にものが散らばるのを防ぐため、部屋をきれいにしておくなどふだんからできることを今すぐ始めていきましょう。
取材協力=東京都総務局
協力=東京都政策企画局、教育庁、交通局、建設局、都市整備局、東京消防庁