2024年11月号
あつこお姉さんとよしお兄さんが体験!
「介護」ってどんな仕事?
みなさんは、「介護の仕事」について、知っていますか?なんとなくイメージがあっても、実はよく知らない人が多いのではないでしょうか。
社会を支える介護の仕事は、どんな仕事なのでしょう?NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で21代目の歌のお姉さんであった、小野あつこさんと、同じく体操のお兄さんを14年間つとめた小林よしひささんと一緒に、介護施設で仕事を体験してきました。
東京都に住んでいる65歳以上の高齢者数は311万8000人(令和6年9月15日時点)で、東京都に住んでいる人の約4人に1人が高齢者です。そして2050年には、約3人に1人が高齢者になると予想されています。
2050年というと、今の小学校4年生が36歳になっているころ。みんな年を重ね、おうちの人も「介護」が必要になっているかもしれません。
介護施設は、生活に手助けが必要な高齢者が、施設で働く職員の見守りのもと、暮らしている施設です。介護施設の中って、どんなふうになっているの?入居者のみなさんは、介護施設でどんな毎日を過ごしているのでしょうか。
介護施設ってどんなところ?
今回案内してくれたのは、特別養護老人ホーム「友愛荘」(東京都町田市)の介護主任、板垣紘子さん。施設で過ごす入居者の方からも、働く職員のみなさんからも信頼されている、ベテランの介護士です。
あつこお姉さん 私の周りにも介護施設を利用している方がいますが、実際にどんなところかは、実はあまり知りません。今日は介護のお仕事を体験するのを楽しみにしていました!
よしお兄さん そうですね、実はぼくもあまり知らなかったので、楽しみにしていました!今日は友愛荘で介護のお仕事を体験しながら、板垣さんに色々なことを教えてもらいましょう。
あつこお姉さん・よしお兄さん 板垣さん、よろしくお願いします!
板垣さん はい!こちらこそよろしくお願いします。
あつこお姉さん どんな方が介護施設で暮らしているのですか?
板垣さん 介護が必要な高齢者の方たちが暮らす場所は、体の不自由さなどの程度(※要介護認定)によって、さまざまな施設があります。この施設は「特別養護老人ホーム」といって、どんなときでも介護が必要で、自分の家で生活することが難しいお年寄りが入居する施設です。
💡豆知識 要介護認定って?
介護が必要な人は、国が決めた「要介護認定」を受けます。これは、生活をするためにどれくらいの援助や介護が必要かを判断するもので、介護を必要とする程度が軽い方から、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の7段階に認定されます。それぞれの段階に応じた、必要な支援を受けられるようになっています。
一人ひとりが過ごすためのベッドのあるスペースはもちろん、リビングやキッチン、手すりの付いたトイレやお風呂もあり、わたしたち施設の職員の見守りのもと、自分の家で暮らすように過ごせるところです。この施設では、介護士をはじめ、食事を作ったり、運動をサポートしたりする職員など、全部あわせて約100人が働いています。
よしお兄さん 介護施設と病院はどう違うのですか?
板垣さん 病院に入院している方は、お医者さんの治療を受ける「患者」さんです。それに対して介護施設は、生活にお手伝いが必要な方たちが、安心して暮らすための場所です。ですから、わたしたちの施設では、みなさんのことを「入居者さん」と呼んでいます。施設には、職員が24時間365日いつでもいて、何かあるとすぐにお手伝いに行きます。
具合が悪くなったときのために、日中は医務室に看護師さんがいます。おやつや生活用品の買い物ができる売店のほか、髪の毛を切ったり染めたりできる理美容室もあって、おしゃれも楽しめます。
お年寄りに寄りそう介護士の仕事
あつこお姉さん 介護士のおもなお仕事について教えてください。
板垣さん 1日3食の準備と食事のお手伝いがあります。薬が必要な人は食後に薬を飲んでもらいます。そして歯みがきのお手伝い。トイレやお風呂に入るお手伝いもします。水分補給も欠かせません。職員同士で入居者さんの情報を知っておくために、睡眠時間やトイレの回数などを記録するのも、大切な仕事のひとつです。
よしお兄さん おじいちゃん、おばあちゃんと接するとき、どのようなことに気をつけていますか?
板垣さん 目線を合わせて、お話を丁寧に聞くように心がけています。年をとると近くのものが見えにくくなったり、色の感覚が変化したり。耳も遠くなりますし、味やにおいの感覚も人それぞれにおとろえていきます。一人ひとりに合った接し方で、生活のお手伝いをするのがわたしたちの仕事です。
心を元気に!大切な「お楽しみタイム」
あつこお姉さん おじいちゃん、おばあちゃんの楽しみにしていることはどんなことですか?
板垣さん おしゃべりが好きな人もいれば、一人で自分の時間を過ごしたり、テレビを見るのが好きな人もいます。人それぞれなのですが、みなさん歌うことが大好きです。リビングに出てきてカラオケ大会を楽しむこともありますよ。
大きな声で歌うことで気分がすっきりしますし、リズムに乗って歌詞を思い出すことで、脳のトレーニングにもなります。何よりも、楽しい気分になることは、お年寄りには元気の源なんです。
板垣さん もしよろしかったら、ぜひみなさんで一緒に歌いませんか?
あつこお姉さん 歌うことは、みなさんにとっていいことずくめなのですね!
みなさん、はじめまして!小野あつこです。わたしも歌が大好きなので、今日は一緒に「ふるさと」を歌いましょう!
板垣さん ありがとうございました!
入居者のみなさんで、簡単な運動をすることもあります。手や指先を動かすことは、歌と一緒で脳に刺激があって、認知症の予防に効果があると言われています。お手玉やあやとりもお年寄りにはいい運動なんですよ。
よしお兄さん みなさん、こんにちは!小林よしひさです。今日は一緒に「春が来た」に合わせた手遊びをしましょう!
板垣さん お二人とも、元気をくださりありがとうございます!
介護士の仕事の魅力って?
あつこお姉さん 介護のお仕事をしていて嬉しかったことを教えてください。
板垣さん 特別養護老人ホームは、入居されている方が最後の時間を過ごす場所だと思っています。その大切な時間を、一瞬でも多く、笑顔で「楽しい」と思える時間を過ごしてほしいと思っています。ご家族から「この施設にお世話になってよかった」や、「職員さんによくしてもらった」、「ありがとう」と言っていただくと、介護士になってよかったな、と思います。
よしお兄さん 逆に、大変だなと思うことを教えてください。
板垣さん 一番大変なのは、自分の体調管理です。感染症を施設の中に持ち込まないようにふだんから意識しています。
あと、介護士は体力を使う仕事なので、体を痛めないように気を付けています。最近では、介護士の力仕事の負担を減らすために、体につけて使う機械も登場しています。最新の機械は、すごいんですよ!
介護の現場では、ロボットも活躍します。ロボットといっても自分で歩いて介助してくれるものではなく、これはアシストスーツ。
高齢者の方をベッドから起こすときなどに、介護士が身につけるものです。これをつけると背中から引っ張ってもらうような感覚で、自分だけだと100の力が必要なところ、70くらいの力ですむ感じです。わたしも腰痛があるので、以前は休みながら作業していましたが、これを使うようになってからは、ずいぶん楽になりました。
板垣さん そしてこれはアザラシ型のコミュニケーションロボットです。なでてあげると、かわいい声で鳴いたり、目を閉じたりします。人の心を温かくして、元気づけてくれる、いやしの効果があります。
あつこお姉さん まばたきも鳴き方も、本当にかわいいですね!
よしお兄さん 板垣さんは、なぜ介護のお仕事をしようと思ったのですか?
板垣さん 社会人になったころは、会社に就職して、社会人のバレーボールチームでプレーしていました。ただ、こどものころ、おじいちゃんやおばあちゃんが大好きでしたし、近所のお年寄りたちと話すことも好きでした。
その思い出があったこともあり、介護の仕事をしたいと思うようになりました。介護の仕事に転職して、介護士歴は20年になります。
💡豆知識 介護士になるための資格試験って?
介護士は、介護の仕事をしている人のことを言います。介護士の中には、「介護福祉士」という国の資格があり、その資格をとると、より専門的な仕事をすることができます。
介護福祉士の資格を取るためには、専門知識を学校などで学んでから国家試験を受ける方法と、3年以上介護の現場で実際に介護士として働き、必要な研修を受けてから国家試験を受ける方法があります。
入居者の安心をチームで支える介護の仕事
あつこお姉さん 介護のお仕事にはどんな種類がありますか?
板垣さん わたしたちの仕事は、まず「入居者さんの安心」を中心に考えます。
その安心を守るために毎日の生活をサポートする介護士、必要な支援を計画するケアマネジャー、バランスのよい食生活を支える管理栄養士、心身の機能を保つための活動を提供する機能訓練指導員、困りごとを相談できる生活相談員、そして施設全体を取り仕切って、職員全員をリードする施設長の仕事があります。
お互いに協力し、入居者さん一人ひとりに合った支援を組み立てます。
あつこお姉さん 介護のお仕事は、たくさんの職員のみなさんのチームプレーで成り立っているんですね。
板垣さん 特別養護老人ホームに入居された方は、その施設が大事な暮らしの場になります。わたしたち職員は、入居者のみなさんが少しでも多く、笑顔で「楽しい」と思える時間を過ごしてほしい、と思って暮らしのお手伝いをしています。
ご本人が喜ばれるのが一番ですし、ご家族から「この施設にお世話になってよかった」と思っていただけるとうれしいです。
「ありがとう」と感謝の言葉をいただけると、わたしたちもはげみになります。
介護の仕事体験を終えて…
あつこお姉さん わたしは高齢の祖母と一緒に住んでいましたので、人はだれでも年をとってサポートが必要になっていくことを身近で経験しています。
介護施設でも職員のみなさんが家族のように、おじいちゃんおばあちゃんに笑顔ではっきりゆっくりお話ししたり、心にしっかりと寄りそいながらサポートされている様子に、家族のような温かさを感じました。
ご高齢の方やそのご家族が安心して暮らすためにとても大切なお仕事ですね。
よしお兄さん これまでも介護施設を訪ねたことはあったのですが、実際に入居者の方が利用する設備や職員のみなさんが働く姿を見せていただいたのは初めてでした。
お世話をするというよりも一人ひとりに合わせて生活をサポートすることが大切なんですね。入居者の方と職員のみなさんが心を通わせていることがしっかりと伝わってきました。
介護のお仕事は体力を使うので大変な面もあると思いますが、入居しているご本人だけではなく、その方のご家族にも安心してもらえる、やりがいのあるお仕事なんだということが、よく分かりました。
あつこお姉さん・よしお兄さん 板垣さん、今日はありがとうございました!
板垣さんは、介護の仕事は大変なこともあるけれど、その分やりがいがあって、とても素敵な仕事だということを教えてくれました。高齢者の方が安心して暮らせるように支える「介護の仕事」に興味がわいたら、みなさんも、将来の夢の選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか。
取材協力=特別養護老人ホーム友愛荘(社会福祉法人友愛十字会)、東京都福祉局
❖東京インフォメーション 東京都の介護の仕事についての取り組み
ハローキティと福祉の仕事を楽しく学ぼう!
「福祉のお仕事情報サイト Hello エッセンシャルワーク」は、わたしたちの暮らしを支えてくれる福祉の仕事について、ハローキティと一緒にグラフなどを見ながら楽しく学べるウェブサイトです。
みなさんにピッタリの福祉の仕事を紹介する『適職診断』もありますので、ぜひやってみてください!