2024年12月号
公園やトイレ、正しく使えている?みんなが使う場所での思いやり
みんなのためにつくられた場所やたくさんの人が利用できる建物は「公共の施設」と言い、身近なものだと、学校や図書館、公園などがあります。これらの施設はだれか一人のものではなく、国や都道府県、市町村などが、みんなのためにつくった場所です。 みんなのための施設だからこそ、ルールを守り、自分たちだけでなく、ほかの人も気持ちよく使えるようにする必要があります。さて、みなさんは正しく使えていますか?
公共の施設にはどんなところがある?
公共の施設は、どれも私たちの生活を支える役割を持ったものです。では、具体的に見てみましょう。
▶建物や場所:学校や図書館など
みなさんに身近な学校や図書館、公園や園内にある競技場や体育館、芸術に触れることができる博物館や美術館などの教育や文化にかかわる建物も、公共の施設です。ほかにも市役所や公民館、保健所や公衆トイレなど、人々の生活を支える施設や、警察署、消防署などの、人々の安全・安心を守る施設があります。
▶生活を支えるサービス:駅や道路など
交通に関連する施設をあげると、駅や道路、港、空港も、公共の施設です。人々の移動やものの流れを支えるこれらの施設がないと、人々の生活は成り立ちません。バスや電車も、多くの人が使うので「公共交通機関」と呼ばれています。
▶生活に欠かせない設備のある施設:浄水場や下水処理場など
街を清潔にし、人々の健康を守るための設備がある建物も、公共の施設です。たとえば、大きな煙突のついたごみ焼却場や、きれいな飲み水をつくる浄水場、汚水をきれいにする下水処理場は、これにあたります。
このなかに、みなさんがいつも立ちよる施設はありますか?
みなさんがふだんから利用する施設は、みんなが使う場所だからこそ、思いやりの心をもってルールを守る必要があります。イメージがしやすいように、公園や公衆トイレを例に、あらためて振り返ってみましょう。
公園の遊具、ゆずり合っている?
みなさんに身近な公共の施設である公園。人気の遊具で順番を待った経験はありませんか? 都立公園には、だれでも楽しめるように作られた遊具がある公園が2か所あります。砧公園(世田谷区)と府中の森公園(府中市)です。今回紹介する砧公園は、春にはお花見、秋には紅葉を楽しめる緑豊かな場所で、たくさんの都民に親しまれています。
とても大きな公園で、中には、芝生がしきつめられたピクニックに最適な「ファミリーパーク」や、野球場やサッカー場、美術館などがあります。このうち、体を動かして遊ぶ遊具のあった「アスレチック広場」が、だれもが楽しめる「みんなのひろば」として整備され、2020年(令和2年)にオープンしました。
これまでの公園の広場には、体などに障害のあるこどもにとって、遊びづらい遊具が多くありました。ここは、だれもが分けへだてなく利用できて楽しめる遊び場にしよう、という目的で「ユニバーサルデザイン」の遊具が設置されました。
もともとあった船のかたちをした遊具には、かたむきがゆるやかなスロープが設置され、車いすに乗ったこどもでも上がれるようになっています。
すべり台の手前には、車いすからすべり台へ楽に腰をうつせるよう、段差がつけられています。ふつうのすべり台より幅が広いので、つきそいの大人と一緒にすべれるようになっています。
ブランコは、公園によくあるタイプのほか、寝転んで乗ることができるおさら型のブランコや、体を支える力が弱いこどもでも乗れる背もたれと安全バーがついたいす型ブランコも設置されています。
迷路は、車いすに乗ったままでも遊べるよう広い幅になっています。目が見えなかったり見えにくかったりしても、パネルにきざまれた鳥の足あとをたどってゴールすることができます。
ほかにもたくさん!みんなが一緒に遊べる工夫
ふだん見かけない遊具がたくさんあって、遊んでみたいと思いましたか? これらの「ユニバーサルデザイン」の遊具は、障害のあるなしにかかわらず、だれもが一緒に遊ぶことができます。みんなでゆずり合って、楽しく遊べるといいですね。
その公衆トイレ、だれのため?
公共の施設でみなさんがよく使う公衆トイレも、だれもが利用しやすいように整えられてきています。公衆トイレの出入り口などには、どんな設備があるのか、だれでも絵を見てわかる「ピクトグラム」が表示されていることが多いですね。
では、東京都庁にあるユニバーサルデザインの「車いす使用者対応トイレ」を見ていきましょう。
出入り口付近の天井には、目が見えない・見えにくい方のために音声案内スピーカーが設置されています。
車いす使用者対応トイレは「バリアフリートイレ」「車いす対応トイレ」などと呼ばれることもあります。車いすの人が利用しやすいよう、車いすが回転できる広いスペースがあります。
さまざまな方が安全・安心に利用できるよう、便器に乗り移ったり、立ち上がったりする時につかまることができる手すりなどがついています。
洗面台は、だれにでも使いやすいよう、手を近づけると自動的に水が出るものになっており、感染症を防ぐことにもつながります。
流すボタンや非常用の呼び出しボタンなど、位置がわかりやすくなっています。
トイレをするための人工肛門・人工膀胱のある方を「オストメイト」と言います。立ったままの姿勢で装置やその周りを温水シャワーやせっけんで洗うことができるようになっています。
小さなこどもや赤ちゃんを連れた人のための、ベビーチェアやおむつ交換台を見たことがある人も多いでしょう。こうした設備は、以前は女性用トイレだけにある場合も多かったのですが、今は男性用トイレにも増えてきています。
公衆トイレは、みんなで使う場所です。次に利用する人のために、きれいに使い、出る時は便座のふたを閉めるようにしましょう。
また、「車いす対応トイレ」を使わなくても大丈夫な時は、なるべくほかのトイレを使うようにするといいでしょう。車いすやオストメイトの方が、順番を待っているかもしれません。やむをえず使うときも、必要以上に長い時間使わないように気を付けましょう。
思いやる心を大切に
誰もが楽しめる遊具を設置している公園や、駅やデパートで見かけるユニバーサルデザインのトイレを紹介しました。みなさんは、思いやりを持って使うことができていますか? 公共の場はみんなが使う場所だからこそ、使うときには決まりを守り、ほかの人を思いやる心を持ちましょう。記事で紹介した公園やトイレだけでなく、ほかの施設などでも、ゆずり合って使うことを大切にできるといいですね。
取材協力=東京都建設局、福祉局、財務局