2025年3月号
春休みに行ってみよう!多摩動物公園「昆虫園」がすごい

都立多摩動物公園(東京都日野市)は、年間入場者数約90万人で、都内では上野動物園と並ぶ人気の動物園です。多摩丘陵の地形と豊かな自然をそのまま利用した広大な敷地は、50ヘクタール以上(東京ドーム約10個分)で、上野動物園の3倍以上もの広さがあります。
ここにいる動物の種類は、なんと約260種。ライオン、キリンやシマウマのように、野生で群れをつくる大型の動物をダイナミックに展示していたり、昆虫の生態を楽しみながら学べる施設「昆虫園」もあります。多摩動物公園は、生きものの生命力を間近で感じることができる魅力いっぱいの動物園です。

「自然」を生かした広大な都立多摩動物公園
都立多摩動物公園が開園したのは、1958(昭和33)年です。ニホンコウノトリやタヌキなど日本の動物のほか、トラ、オオカミ、オランウータンなどアジア各地の動物がいる「アジア園」、コアラ、カンガルーなどオーストラリアの動物がいる「オーストラリア園」、アフリカゾウや、ライオン、キリンが群れで暮らしている「アフリカ園」と、チョウが優雅に飛び交う巨大な温室や、たくさんの昆虫を飼育・展示している「昆虫園」の四つのエリアに分かれています。
アフリカ園の「ライオンバス」は、窓の大きなバスに乗って、ライオンがエサを食べたり仲間と過ごしたりする様子など、いろいろなしぐさを目の前で見ることができる大人気の展示です。

このバスはライオンの群れを間近で観察できる世界で初めての「サファリ形式」で、1964(昭和39)年に運行を開始しました。


また、アジア園の「スカイウォーク」のロープを渡るオランウータンの空中散歩や、国内でここにしかいない絶滅危惧種、オーストラリア園のタスマニアデビルも人気を集めています。


こうした動物たちのほかに、多摩動物公園には、昆虫観察のポイントや体のつくり、成長の不思議が学べる「昆虫園」があります。今回はこの昆虫園を紹介します。
多摩動物公園の「昆虫園」で昆虫の世界を知る
「昆虫園」が動物園の中にあるのはとてもめずらしいこと。多摩動物公園の昆虫園では、約90種の生き物を展示しています。昆虫たちの飼育・展示を担当している石島明美さんに案内していただきました。
昆虫園のエリアに入ると、まず目に入るのは2匹の巨大なバッタのオブジェ。


これは、トノサマバッタのオスとメスの姿をリアルに再現したステンレス製の像で、本物のトノサマバッタの約100倍もの大きさがあるそうです。
昆虫園には、大温室の中を約15種類のチョウが優雅に飛び交う「昆虫生態園」と、たくさんの昆虫を飼育・展示している「昆虫園本館」の2つの施設があります。
色とりどりのチョウが舞う「昆虫生態園」
まずは、昆虫生態園に入ってみましょう。16メートルもの高さがある大温室は上から見るとチョウの形になっており、その左右の羽にあたる両側に展示室が配置されています。大温室に入ると、そこはまるで夢のような別世界。数えきれないほどの色とりどりのチョウたちが飛び交っています。




たくさんいるチョウの中で、とくに目立つのが「オオゴマダラ」。日本で一番大きなチョウで、羽を広げると10センチメートル以上にもなります。東南アジアに広く見られる種で、日本では沖縄地方に生息しています。白黒のまだら模様が特徴で、ゆっくりひらひらと羽ばたく姿は、ひときわ優雅です。

石島さんは「この大温室は、もともとあった谷のような場所に、ガラスのドームでふたをするように地形を利用して作られていて、毎月約1200匹のチョウなどを放っています。チョウたちは日が当たらない夕方になると葉に止まるなどして休んでしまいます。よく日が当たり、チョウたちが活発に飛んでいる午前中に見るのがおすすめです」と教えてくれました。

昆虫生態園で観察できるチョウ












※展示の種類は2025年2月現在
昆虫生態園のろうかには「展示ゾーン」もあり、左ウイングでは、沖縄で生息するカエルなどの生きものや、チョウの幼虫やさなぎをパネルの説明と合わせて観察できます。

右ウイングでは、昆虫園のシンボルマークのモチーフでもある「トノサマバッタ」が展示されています。
バッタというと緑色のイメージがありますが、実はトノサマバッタは1匹だけでいると緑色になり(孤独相)、仲間といると黒くなり(群生相)、見た目や生態が変化します。
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群れでいるほうが、エサを求めてよりよい場所を目指して遠くへ飛んでいけるように、羽が長くなるなど、より移動に適した体になるそうですよ。
この右ウイングでは、近年数を減らしている水辺の昆虫「ヘイケボタル」の発光展示をしています。おしりが光るホタルの成虫がつくり出す、星空のような美しさを見ることができます。


不思議な昆虫を近くで見られる「昆虫園本館」
続いて、昆虫園本館に行ってみましょう。昆虫園本館では、昆虫の体のしくみや、飛ぶ、歩く、泳ぐなど昆虫の動き方の不思議などを、模型を通して学ぶことができます。


そして一番の見どころは、めずらしい外国産の昆虫の展示。なかでも人気なのは、日本でここでしか見ることができない、「ハキリアリ」の働く姿や、オーストラリアの光る虫「グローワーム」の展示です。
ハキリアリ(中南米)
ハキリアリは、主に中南米にいるアリの仲間です。名前の通り、木の葉を切り取って巣に運ぶのが特徴です。
なぜ、大量の葉っぱを巣に運んでいるのでしょうか。実は、葉っぱを食べるためではありません。この葉に特殊な菌を植えつけて、育てているのです(菌園)。アリたちはこの菌を食べて生活しています。つまり、ハキリアリは、力を合わせて「農業」をしているアリなのです。


中南米に生息しているこのアリが、もし脱走して国内で増えてしまうと、農業に大きな被害を与える可能性があるため、飼育するには、アリが1匹も外に出られないような特別な施設がないと許可されません。そのため、このアリたちが、実際に葉っぱを切り取って巣に運び、菌を育てている姿を間近で見られるのは、国内ではこの多摩動物公園だけです。

グローワーム(オーストラリア)
また、「グローワーム」を見ることができるのも、日本でここだけです。グローワームはオーストラリアのハエの仲間の幼虫で、小さな体を発光させ、ねばねばした液がついたシャンデリアのようなワナをつくって獲物を待ちぶせています。グローワームの光はとても弱く、真っ暗な部屋の中に展示されているので、目をならしてから、じっくりと見てみましょう。
※グローワームの展示は平日の9時30分から午後3時30分までです。


昆虫園本館で見られるめずらしい昆虫
このように昆虫園本館ではまだまだたくさんのユニークな昆虫たちに出会えます。世界で一番大きなカブトムシのヘラクレスオオカブトや、葉っぱとそっくりな形のオオコノハムシ、巨大グモのタランチュラなども。



このほか本館では、水の中で生きるゲンゴロウなどの水生生物の展示や、実際に昆虫に触ることができる「ふれあいコーナー」もあります。興味がある人は、ぜひ体験を!


都立多摩動物公園で生きものの魅力に触れよう
このように多摩動物公園では、大型の動物から、目をこらさなければ見えないとても小さな昆虫まで、多くの生きものを間近に観察することができます。動物観察のヒントになる「かんさつシート」が、正門近くのウォッチングセンターで無料配布されています。今まで気がつかなかった動物たちの新しい特徴を発見できるかもしれません。多摩動物公園に行ったらぜひ手に取って、生きものたちの体の仕組みやどのように生きているのかを、実際に見て楽しみながら学んでみませんか?
取材協力=公益財団法人東京動物園協会 多摩動物公園、東京都建設局
🐘東京都立多摩動物公園
交通
京王線、多摩都市モノレール『多摩動物公園駅』下車、徒歩1分
開園時間
午前9時30分~午後5時まで(入園は午後4時まで) 昆虫園は午後4時30分まで
休園日は毎週水曜日(水曜日が祝日・休日・都民の日の場合はその翌日)と年末年始(12月29日~1月1日)

入園料
一般600円、中学生200円、65歳以上300円、小学生以下と都内在住、在学の中学生は無料
※ライオンバスは別料金
無料開園日
みどりの日(5月4日)、開園記念日(5月5日)、都民の日(10月1日)
🦁ライオンバス
発券時間
午前9時30分~(売切れしだい終了)
乗車券は販売当日のみ有効。発券後の時間変更及び払い戻し不可(運行中止時を除く)。
発券場所
ライオンバスステーション乗車券うりば

👉お知らせ 3月よりオンラインでの販売も
2025年3月より、土日祝日など混雑が予想される日に合わせてオンライン乗車券の販売が始まりました。詳しくはこちらから。
運行時間
午前10時〜午後4時(時間指定制)、運行間隔:10分〜12分
料金
大人(高校生以上~64歳)500円、65歳以上は150円、こども(3歳~中学生)150円、0歳~2歳は無料 開園中の空席状況はこちらから。詳しくは都立多摩動物公園公式サイトをご確認ください。

